【記者座談会】建築学会、4年ぶりの対面開催/デジタルライフライン実現会議の「中間とりまとめ案」 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

公式ブログ

【記者座談会】建築学会、4年ぶりの対面開催/デジタルライフライン実現会議の「中間とりまとめ案」

◇社会と学術をつなぐ学会の働きが重要

A 12日から15日にかけて、日本建築学会の全国大会が開かれたね。

B 京都大学吉田キャンパスでオンライン会場も併用しながら開催した。4日間の会期中に計6644題の学術講演や建築デザインを発表し、シンポジウムや建築デザイン発表会といったさまざまな形式で、建築が直面する課題などについて活発に議論した。

C 久しぶりの対面形式の大会とあって、1万人を超える参加者を記録した。実際、2日目以降に開いた対面形式のセッションの一部では、傍聴者が会場に入りきらない状況だった。会合の終了後には、登壇者や傍聴者が立ち話で意見を交わす光景も見られ、活気が伝わってきた。

B 関東大震災から100年の節目の大会ということで、総合研究協議会では、震災後の1世紀に培った建築技術を踏まえ、次なる100年の建築・都市像を描く提言案の発表があった。また、記念シンポジウムでは、長い歴史を持つ京都を題材に、建築と歴史の調和や文化財の防災対策などのテーマを扱った。

C 総合研究集会ではほかに、SDGs(持続可能な開発目標)や脱炭素がテーマになった。どちらの会合でも、多様化する社会課題に市民や他分野と連携してアプローチしていく必要性を訴えていた。脱炭素の議論では、海外と比べて社会を巻き込んだ取り組みが足りず、学術と社会の距離の遠さの指摘があった。

B 大震災を踏まえ発表した提言案は、建築をつくる側だけでなく利用者や社会、教育などを巻き込んだ幅広い相手に向けられている。次なる100年に幸福な建築・都市を築いていくためには、社会と学術をつなぐ学会の役割が一層重要になりそうだね。

建築学会の研究協議会では、来場者とも議論が繰り広げられた

◇さいたま市と八王子市でインフラ管理DX

A 話しは変わるけど、経済産業省の「デジタルライフライン全国総合整備実現会議」が中間まとめ案を示した。

D 2024年度から官民が集中投資を進めるアリーハーベストプロジェクトの先行地域候補と整備すべきデジタルライフラインを特定したことがポイントだ。ドローン航路は、送電網が埼玉県秩父地域、河川が浜松市の天竜川水系、自動運転支援道が新東名高速道路駿河湾沼津~浜松間など、インフラ管理DX(デジタルトランスフォーメーション)は、さいたま市と東京都八王子市となった。

E 世間的には自動運転とドローン航路に注目が集まっているけど、建設産業にとって影響が大きいのはインフラ管理DXだと思っている。地下にある通信、電力、ガス、上下水道の管路に関する空間情報を3次元化し、空間IDを使って工事を含む業務の効率化や自動化につなげていく。将来的には地下道や地下鉄なども取り込みたい意向だ。

F 先行地域候補の両市でいえば、自治体、東京電力パワーグリッド、東京ガス、NTTのインフラ管理事業者それぞれが保有するインフラ設備の情報を統合した基盤として、インフラ管理や埋設物照会、点検情報共有、工事の立ち会い支援・マシンガイダンス、災害時の設備被害状況提供といったシステムをつくる。政府・自治体・企業間で相互に情報を共有でき、設備点検や工事のリードタイムを減らす。

D 今後は共通業務の対象範囲やデータの主権、工事に携わる建設企業などのアクセス権限の検討が必要だ。また、データ基盤の運営主体も課題になる。インフラ事業者による共同組織が公益デジタルプラットフォーマーになることなどが想定されている。インフラ管理DXの実現に向けては、公共だけでなく、官民でデジタルライフライン整備に投資することになっていく。

【記者座談会】ほかの記事はこちらから

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら