【記者座談会】鹿島がポジティブ・インパクト投融資契約/ミライトHDが西武建設を買収 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【記者座談会】鹿島がポジティブ・インパクト投融資契約/ミライトHDが西武建設を買収

A 鹿島がポジティブ・インパクト投融資の契約を三井住友銀行や三井住友信託銀行と結んだ。

B ポジティブ・インパクト投融資は、SDGs(持続可能な開発目標)など経済・社会・環境に貢献する取り組みを評価して投融資を決める。例えば、鹿島と三井住友信託銀行が締結した「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(資金使途を限定しない事業会社向け投融資タイプ)」は、2050年度までのCO2削減量や廃棄物最終処分率の削減など、鹿島の取り組み項目と評価指標の達成状況を毎年、銀行側が評価して投融資する。

C どんな意味があるのか。

B カーボンニュートラル(CN)に向け多くの企業が50年までのCO2削減目標を公表しているが、その取り組みは企業にとって収入を生まないコストと見られがちだ。経営環境が悪化すれば優先度が下がり、いわば“言いっ放し”になりかねない。前向きな取り組みにするには、CO2削減のための投資が価値を生む必要がある。今回の融資契約は、目標と取り組みで企業価値が評価され財務基盤強化につながる。目標設定と取り組みに意義を見いだせる仕組みだ。

D 同様の事例としてグリーンボンドがあり、建設各社も発行しているが、調達資金の使途が限定される点が課題だ。大成建設が日本政策投資銀行と結んだ「対話型サステナビリティ・リンク・ローン」は、グリーンボンドの発行基準を満たさないものの低炭素経済社会への移行期の取り組みを指標として融資を受ける。

A 各社がCNを“理想”で終わらせず、財務面を支える武器に転換しようとしている。実態が伴わない取り組みも高く評価される“グリーンウォッシュ”には気を付ける必要があるが、前向きな動きとして注目していきたい。

世界中がカーボンニュートラルに向かう中、建設市場を維持・成長させる意味でも環境へのさまざまな取り組みは欠かせない

統合によるシナジー効果を最大化

D 話は変わるが、情報通信設備工事業大手のミライト・ホールディングス(HD)が、総合建設業の西武建設(20年度売上高686億円)を連結子会社にすることを決めた。西武建設の親会社に当たる西武鉄道から、株式95%を3月31日に取得する予定だ。

B 取得価格はアドバイザリー費用などを含め約620億円。ミライトHDの20年度売上高4637億円から考えると大きな買い物だよね。

A これまではハウスメーカーがゼネコンを傘下に収める動きが見られたが、今回は元請け側のゼネコンをサブコンが子会社化する。情報通信設備工事業に限ったことではないが、もともとゼネコンより企業規模が大きく、財務面も豊かなサブコンは少なくない。施工体系上と実態の関係性も変わってくるだろう。

B 今回のミライトHDの場合、グループ子会社のミライト、ミライト・テクノロジーズとの3社統合を7月に予定しており、新体制でさらなる成長を目指すことになる。その成長領域にグリーン発電事業の参入などを掲げているため、西武建設のノウハウをグリーン発電所建設などに生かしたい考えがあるのだろう。

C それにしても情報通信設備工事業は、建設業にありながらM&A(企業の合併・買収)が活発だね。

B 情報通信設備工事業はもともと日本電信電話公社(現NTT)の工事を請け負う企業が合併を繰り返し、現在のコムシスホールディングス、エクシオグループ、ミライトHDの大手3社が誕生した。M&Aの下地はあったはずだ。

A いずれにしても今後は、統合によるシナジー効果を最大化するためのプロセス「PMI」(ポスト・マージャー・インテグレーション)で、業務や意識の統合を進めることが重要になる。今後の動きに注目したい。

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