【記者座談会】土木学会全国大会/台風14号、15号 | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【記者座談会】土木学会全国大会/台風14号、15号

A 土木学会の全国大会が12-16日に京都市で開かれた。初日と2日目の研究討論会はオンラインだったが、3日目以降の特別講演会や学術講演会などは現地で行われたね。

B 2020、21年度はともにオンライン開催だったため、対面形式は実に3年ぶりとなった。3日目の特別行事では登壇者が浴衣を着用する京都らしい試みもあり、多くの参加者が対面の良さを実感したんじゃないかな。

C 上田多門会長もコロナ禍での対面開催が実現したことに手応えを感じており、「オンラインと対面の良さを兼ね備えたハイブリッド形式が今後のモデルになる」と明言した。その言葉どおり、次回大会もオンラインと広島市などでの現地開催を予定している。

D 今回のテーマは「『文明化された社会』をこえて~土木學のめざすもの~」だったね。

B 現代の社会経済活動を支える基盤の整備に土木が大きく貢献してきたことは言うまでもない。一方で、現代社会は気候変動をはじめとする大きな課題に直面している。持続可能な社会の実現が鍵となる中、大会では今後の土木の在り方や果たすべき役割を探る議論が活発に行われた。

C 上田会長は講演で、世界課題に対応するため、グローバルな視点を持つ人材の重要性を説いていた。会長プロジェクトとして、世界で活躍する技術者や研究者の育成に注力する考えだ。

D 「土木学会はグローバルな課題に対してオピニオンリーダーになれる」という上田会長の言葉も印象に残っている。SDGs(持続可能な開発目標)に代表される世界課題に対し、日本の土木分野のさらなる貢献を期待したい。

3年ぶりに対面形式で行われた土木学会全国大会。次回大会もオンラインと現地での開催を予定している

強靱化が奏功? たゆまぬ整備は重要

A ところで、台風14号と15号が相次いで日本列島に大雨をもたらした。毎年のように大雨で災害が起きているが、今回はどうだったのか。

E 確かに各地で記録的な大雨となり、14号での九州や15号での静岡県は土砂災害も発生して被害者が出ている。軽々しいことは言えないが、昨年、一昨年の豪雨災害に比べれば被害は小さいように感じる。例えば、14号は超大型台風ということで、地域の建設会社もかなり警戒していたが、熊本県や新潟県の建設会社社長に聞くと、「今回はそれほど怖さを感じなかった」と話していた。

F 静岡県では現在も対応が続いている。清水地区の断水が深刻だったが、興津川の取水口付近の流木撤去も済み、解消し始めている。でも、それ以外で昨年の熱海の土石流や一昨年の球磨川の氾濫といったような甚大な被害には至っていない。

A 近年の国土強靱化の取り組みが功を奏したのかもしれない。

E むしろ運が良かったというのが正確だろう。だが、14号では全国123のダム、15号でも29ダムが、事前放流を含む洪水調整機能を果たした。河川の堤防整備で守られた地域も少なくないだろう。被害が出なかった時にインフラ整備の効果を測ることはなかなか難しいけれど、効果は間違いなく出ているのではないか。

F 一方で、7月の宮城県北部の大雨では過去に氾濫した河川が再び氾濫するなど、記録的な大雨が繰り返されることで脆弱(ぜいじゃく)な部分も明確になった。加えて、これまで被害が少なかった地域でも豪雨になっている。被害が連続している箇所は迅速に、これまで被害がなかったところも脆弱な点を点検し、強靱化を着実に進める必要があるね。

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