受注者から事業主体へ/異業種連携で社会変化に備え/建コンビジョン2025 | 建設通信新聞Digital

6月4日 水曜日

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受注者から事業主体へ/異業種連携で社会変化に備え/建コンビジョン2025

 建設コンサルタンツ協会(大本修会長)は、「建設コンサルタントビジョン2025」を取りまとめた。「オープンイノベーションで持続可能な未来を創る」を主題に、社会課題の変化に伴って拡大する建設コンサルタントの役割と将来像、実現への道筋を提示した。 将来像には、発注を受ける立場から、事業の企画・推進を担う事業主体への転換を打ち出し、法務・労務・ファイナンスなど多分野の知見を持つ組織への進化を掲げた。デジタル技術の浸透を見据えた異業種連携を促し、変化の激しい時代に対応できる技術開発体制の構築を目指す。
 ビジョンでは、インフラの老朽化、激甚化する自然災害、仮想空間の活用、人口減少や格差の拡大といった将来予測される課題を挙げ、これらに備えた、地域インフラの最適化や再編、スマートシティや流域水管理など、各種ハード対策に技術力で貢献していく方向性を示した。
 時代の変化に合わせた制度面の整備も重要な要素だとし、標準契約約款の見直しをはじめ、技術提案・価格交渉方式や成功報酬方式の導入など、プロジェクトの複雑化・多様化に対応した新しい入札契約制度への移行も提案している。
 現在、建設コンサルタントの業務は、従来の調査・設計からプロジェクト全体のマネジメントへと拡大している。公共調達への参加にとどまらず、事業主体としてインフラ整備を主導する役割を果たしていくためには、情報通信、教育、医療・福祉など他産業との連携による新たな事業創出に注力することが重要だとした。
 さらに、こうした動きを支えるには、法律や財務、人材マネジメントなどの知見を取り入れた事業推進体制の構築が不可欠と指摘。インフラ課題が都市部に先行して深刻化する地域への展開も念頭に、地域特性に精通したコンサルタントの存在が一層重要になるとしている。
 業界を取り巻く環境に目を向けると、ロボット、生成AI(人工知能)、ブロックチェーン、メタバースなどの技術が急速に社会に浸透しつつあり、企業や業種、業界の垣根を越えた協業が見られる。協会は、こうした社会動向に応じた会員企業の連携を支援するため、業界を超えたオープンイノベーションの推進に取り組む方針を示した。
 その具体策として、協会版「デジタル四季報」に当たる企業データベースの構築、異業種とのマッチングを行うプラットフォーム整備、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)による情報連携の強化などを挙げ、多様な連携の形を模索していく。
 このほか、将来に備えた建設コンサルタントの革新として、人材確保・育成、生産性向上の仕組みづくり、会員企業のサステナビリティ経営の支援、建設コンサルタントの魅力・地位向上などを設定。
 これらの実現に向け、26-29年を第1期、30-33年を第2期、34-35年を第3期として、段階的に取り組むロードマップも提示した。