土木学会 池内新会長が抱負/「課題解決先進国」目指す/土木の力で社会の未来開く | 建設通信新聞Digital

6月17日 火曜日

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土木学会 池内新会長が抱負/「課題解決先進国」目指す/土木の力で社会の未来開く

 土木学会の第113代・2025年度会長に就いた池内幸司河川情報センター理事長・東大名誉教授は13日、都内で開いた定時総会後の記者会見で就任の抱負や今後の運営方針などを語った=写真。
 池内会長は「かつて課題先進国と呼ばれた段階を経て、少子高齢化・人口減少、インフラの老朽化、気候変動による災害の激甚化・頻発化など、複数の構造的課題が同時に押し寄せる時代に入っている。これらは社会の持続可能性を揺るがすものであり、われわれに制度、技術、価値観の再構築を迫っている」と指摘し、「見方を変えればチャレンジングな状況でもある。こういった課題を乗り越えることで、日本は『課題解決先進国』として、世界に先駆けて持続可能な社会像を提示できるはずだ」と強調した。
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 そのためには「従来の枠にとらわれない新たな取り組みが必要だ。自然科学と社会科学の知見を融合し、分野横断的な連携を図る総合的なアプローチが求められている」と説き、「土木分野は元々、多様な関係者と連携しながら社会基盤を支えてきた領域であり、こうした課題解決でも重要な役割を果たせる」と展望した。
 その上で、「土木学会としても、総合力を発揮できる人材の育成や、多様な専門家が一堂に会して意見を交わせる場づくりをさらに進めていく。異なる立場や視点が交差することで、実効性のある解決策が見いだされ、学術と実務の橋渡しも可能となる」との見解を示した。
 「気候変動に伴う災害の激甚化・頻発化に対する適応策に取り組んできた」と自身のこれまでの経歴を振り返りつつ、会長プロジェクトとして「気候変動の緩和策にも取り組んでいきたい」と表明。「既に、まちづくりや交通、水管理、インフラ整備などの分野で、各主体による取り組みが進められているが、現状はそれぞれが個別に展開され、全体像を体系的に把握することが難しい。こうした取り組みの構造を俯瞰(ふかん)し、体系的に整理するとともに、緩和策をより効果的に進めていくために、障壁となっている事柄を明らかにし、その克服に向けた方策を議論、発信していく。土木の力で社会の未来を切り開くべく、学会がその先導役となれるよう、共に歩んでいきたい」と述べた。
 会長プロジェクトのテーマには「カーボンニュートラル(CN)でレジリエントな社会づくり」を掲げた。エネルギー利用の効率化・省エネ、再エネ・次世代エネの生産・蓄積・利用、CO2吸収といった土木分野におけるCNの取り組みを整理し、CNを進める上で障壁となっている規制、基準、制度などの改善方策を関係機関に提言する。都市へのスマートグリッド導入など、災害時のレジリエンス強化につながるCNの取り組みもまとめる。
 CNのテーマ設定は、将来の担い手確保も狙いの一つという。「今の若い人たちは、われわれの世代以上にCNについて熱心で、自分事に思っている。土木分野がこれだけ社会に貢献してるんだということを発信していけば、土木の魅力発信につながる」と見据える。
 「やはり土木は現場。いくら良い設計書を書いても、実際にものをつくるのは現場である。現場の方々が誇りを持って仕事をできるような環境にしていくことが重要だ」とも語った。