【組織改編の狙いは?/魅力的な建設業を実現】
鹿島は、機械化や自動化、ロボット化のさらなる推進に向け、機械部をメカトロニクス・ソリューション部に改編した。次世代の建設生産システムと銘打つA(右上に4)CSEL(クワッドアクセル)をはじめ、この分野で業界をリードする“メカカジマ”はどこへ進もうとしているのか。船迫俊雄部長に改編の狙いや今後の方針について聞いた。 「今、建設業は担い手の不足、熟練技能者の減少、低い生産性といった課題を抱えている。産業構造として労働集約型であることに起因しており、この脱却に向けて作業の効率化を図っていく必要がある」と分析する。課題への具体的な対策は「機械化や自動化による次世代の新たな建設生産システムの構築」であるとし、メカトロニクス・ソリューション部がその推進役を担う。
「機械化や自動化、ロボット化の流れはどの業界でも不可欠となっている。建設業でも標準化の動きが進み、機械化施工が発展してきた。自動化やロボット化という未来の姿はそれほど遠い話ではないと感じており、新技術の創出などを含めて今後さらに進めていきたい」と話す。
従前の機械部からの改称の狙いは取り組み内容の広がりに加え、次世代の担い手へのアピールの意味もある。「鹿島の財産は唯一社員であり、優れた人材を採用して、切磋琢磨(せっさたくま)することで初めて社会課題の解決に貢献できる。学生やキャリアなど外部から見て、取り組む方向性が分かりやすいという視点でも新部署とする必要があった」と説く。
そして目下、力を注ぐのは自動化技術だ。「当社が自動化の先駆者であると自負している。成瀬ダム堤体打設工事ではA(右上に4)CSELを活用し、月間打設量の国内最高を更新した。トンネルや造成などへの展開も進めており、より良い方法による向上を追求する」と力を込める。建築分野では耐火被覆の吹き付けロボットや搬送業務の自動化に挑戦しているとし、「まだ難しい局面にあるが、将来のために一つひとつ課題をクリアして進めていきたい」と展望する。
今後の機械化や自動化の普及に向けては発注形態が重要になるとみる。「過去の例を見ても、1991年の雲仙普賢岳の火砕流による災害後の復旧工事から建設機械の自動化・遠隔化施工が前進したという事実がある。あれから日本の遠隔操作は世界で最先端となった」とし、試行工事などを通じた現場適用の必要性を指摘。自身も赤谷地区(奈良県五條市)での復旧事業に工事事務所長として携わり、「無人化施工で対応し、高い評価を受けた。われわれが災害時に担う役割はまさにこうした部分にある」と振り返る。
将来的なあるべき姿については「機械化や自動化、ロボット化によって繰り返し作業や苦渋作業を減らし、建設業をより魅力的なものにできる。実際に現場を知っているわれわれ一人ひとり、そして組織としてこうありたいという思い、意欲を持って技術で実現していくことだ」と先を見据える。
* *
(ふなばさま としお)1987年3月岩手大工学部機械工学科卒後、同年4月鹿島入社。機械をつくるのではなく、機械によって新たな価値を創出できる建設業の魅力を知り、同社の門をたたいた。2020年1月機械部機械技術センター所長、22年4月東京建築支店機械部長を経て、25年4月から現職。信念のあるチャレンジ精神を重んじ、皆が挑戦できるよう、その環境を整える考え。趣味は旅行と音楽鑑賞。宮城県出身。65年2月5日生まれ、60歳。
鹿島は、機械化や自動化、ロボット化のさらなる推進に向け、機械部をメカトロニクス・ソリューション部に改編した。次世代の建設生産システムと銘打つA(右上に4)CSEL(クワッドアクセル)をはじめ、この分野で業界をリードする“メカカジマ”はどこへ進もうとしているのか。船迫俊雄部長に改編の狙いや今後の方針について聞いた。 「今、建設業は担い手の不足、熟練技能者の減少、低い生産性といった課題を抱えている。産業構造として労働集約型であることに起因しており、この脱却に向けて作業の効率化を図っていく必要がある」と分析する。課題への具体的な対策は「機械化や自動化による次世代の新たな建設生産システムの構築」であるとし、メカトロニクス・ソリューション部がその推進役を担う。
「機械化や自動化、ロボット化の流れはどの業界でも不可欠となっている。建設業でも標準化の動きが進み、機械化施工が発展してきた。自動化やロボット化という未来の姿はそれほど遠い話ではないと感じており、新技術の創出などを含めて今後さらに進めていきたい」と話す。
従前の機械部からの改称の狙いは取り組み内容の広がりに加え、次世代の担い手へのアピールの意味もある。「鹿島の財産は唯一社員であり、優れた人材を採用して、切磋琢磨(せっさたくま)することで初めて社会課題の解決に貢献できる。学生やキャリアなど外部から見て、取り組む方向性が分かりやすいという視点でも新部署とする必要があった」と説く。
そして目下、力を注ぐのは自動化技術だ。「当社が自動化の先駆者であると自負している。成瀬ダム堤体打設工事ではA(右上に4)CSELを活用し、月間打設量の国内最高を更新した。トンネルや造成などへの展開も進めており、より良い方法による向上を追求する」と力を込める。建築分野では耐火被覆の吹き付けロボットや搬送業務の自動化に挑戦しているとし、「まだ難しい局面にあるが、将来のために一つひとつ課題をクリアして進めていきたい」と展望する。
今後の機械化や自動化の普及に向けては発注形態が重要になるとみる。「過去の例を見ても、1991年の雲仙普賢岳の火砕流による災害後の復旧工事から建設機械の自動化・遠隔化施工が前進したという事実がある。あれから日本の遠隔操作は世界で最先端となった」とし、試行工事などを通じた現場適用の必要性を指摘。自身も赤谷地区(奈良県五條市)での復旧事業に工事事務所長として携わり、「無人化施工で対応し、高い評価を受けた。われわれが災害時に担う役割はまさにこうした部分にある」と振り返る。
将来的なあるべき姿については「機械化や自動化、ロボット化によって繰り返し作業や苦渋作業を減らし、建設業をより魅力的なものにできる。実際に現場を知っているわれわれ一人ひとり、そして組織としてこうありたいという思い、意欲を持って技術で実現していくことだ」と先を見据える。
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(ふなばさま としお)1987年3月岩手大工学部機械工学科卒後、同年4月鹿島入社。機械をつくるのではなく、機械によって新たな価値を創出できる建設業の魅力を知り、同社の門をたたいた。2020年1月機械部機械技術センター所長、22年4月東京建築支店機械部長を経て、25年4月から現職。信念のあるチャレンジ精神を重んじ、皆が挑戦できるよう、その環境を整える考え。趣味は旅行と音楽鑑賞。宮城県出身。65年2月5日生まれ、60歳。