そこが聞きたい・安藤ハザマ執行役員LCS事業本部長/松野 聡氏 | 建設通信新聞Digital

6月27日 金曜日

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そこが聞きたい・安藤ハザマ執行役員LCS事業本部長/松野 聡氏

【今後の事業戦略は?/“人”の力で組織力強化】

 安藤ハザマのLCS(ライフサイクルサポート)事業本部長に執行役員の松野聡氏が就任した。リニューアル事業と総合ビル管理のビルサービス事業を担う同本部は、好調な業績を維持している。新築部門で長年経験を積んできた松野氏は「同じやり方をすれば同じ結果になるかもしれないが、私は新鮮な気持ちで、この事業が今後も持続可能な形で成長していけるよう考えていきたい」と冷静に語る。今後の事業戦略を聞いた。 老朽化施設の増加や、カーボンニュートラルに寄与する社会的要請など、リニューアルの市況環境は今後も好調を維持すると見られているが、松野氏は楽観視はせず、慎重な姿勢を崩さない。
 「正確な分析はまだこれからだが、体感としては仕事量はほぼ横ばいか、やや減少している。物価上昇により金額ベースでは上向いているが、量的には増えていないというのが率直な実感だ」と分析する。
 こうした中、現在LCS事業本部では発足以来最大規模のリニューアル工事に取り組んでいる。「まずはこの工事をチーム一丸で軌道に乗せることが、私のミッションだ」と力を込める。
 この工事を含めて「リニューアルは展開が非常に速い。着工から完成までのサイクルが短く、タイミングを見誤ると計画通りの成果が出ない」と気を引き締める。
 その達成に向け、力点を置くのは“人の力”だ。持続可能な組織づくりには、まず従業員のマインドセットが不可欠と考える。「ここ数年非常に良い成績を収めている。もっと自信を持って、遠慮せずに前へ進んでいこうという姿勢を示したい」と語る。
 人材育成は「言いっぱなしにしない姿勢」を重視する。「とにかく見てあげることが大切。指示を出すだけで後は放任ということは私は絶対にしないし、幹部にもそのように伝えている」。
 本部長に就任してから、LCS事業本部のスピード感には驚かされたという。「修繕やリニューアルの話が出ると、動きが非常にスムーズで早い」と評価する。その理由については、「お客さまのニーズを的確に把握しているからだろう」と分析する。一方、用途によっては不得意分野もあるとし、選択と集中を進めるかなど次なる一手を見据える。
 こうした取り組みとともに新規開拓、既存顧客の深掘りでも、新築部門とのさらなる連携強化を追求する。新築後の改修など建物のライフサイクル全体で確実に受注できる体制の構築を急ぐ。ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化の提案や、施工BIMの活用、さらには360度カメラによる現場3D化などの先進技術も積極的に取り入れ、事業モデルの強化を図る。
 一方、課題として挙げるのが、人材の年齢構成の偏りだ。「本部全体の年齢バランスを見直し、適材適所の配置をタイミングを見計らって早めに実行していく」と方針を示す。きめ細やかな対応を通じて、“人”の力を最大限に引き出し、組織としての総合力をさらに高めていく。

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 (まつの さとし)1990年3月千葉工大工学部建築学科卒後、同年4月安藤建設(現安藤ハザマ)入社。2015年4月首都圏建築支店工事統括部工事第四部長、19年8月関東支店建築部工事第一部イオンモール川口出張所長、21年4月同支店建築部長、23年4月同支店副支店長、24年4月執行役員を経て、25年4月から現職。趣味はゴルフ、愛犬の散歩、家庭菜園。「明るく楽しく」がモットー。千葉県出身。68年2月20日生まれ、57歳。