集結で化学変化起こす/地域課題解決のモデルケースに/東北アライアンス建設 | 建設通信新聞Digital

6月26日 木曜日

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集結で化学変化起こす/地域課題解決のモデルケースに/東北アライアンス建設

(左から)NICHIUNの藤本雄師代表取締役、藤本建設の長谷川学社長、足立部門長、陰山社長、深松組の深松努社長、タカヤの細屋伸央社長、幸栄建設の佐藤信勝代表取締役、大森建設の大森啓正専務
【協力会社シェアで案件対応力強化】
 東北6県の地域建設会社7社とみずほ銀行が30日付で設立する共同出資会社「東北アライアンス建設(TAC)」の社長に就く陰山正弘陰山建設社長は23日、出資契約の締結式で、「地場建設会社が集結することで、さまざまな化学変化を起こし、各企業が単独ではなし得ない成長を実現する」と強調した。みずほ銀行の足立龍生リテール・事業法人部門共同部門長は「地域課題解決のモデルケースになることを期待している」と述べた。 新会社は、建設需要減少や人材不足、技術的制約など東北地域の建設会社が抱える課題に対し、ノウハウや技術の集約、協力会社のシェアリングによって、案件対応力強化、大型開発投資の域内での循環などを実現する考え。
 陰山社長は、建設業許可を取得する新会社の建設事業について「各社は、技術者の確保も大変だが、それ以上に協力会社の確保にも相当苦労している。それら経営資源の共有ができれば、企業単独では拾えない機会を拾える可能性がある。地元企業が手を出すにはリスクが大きいPFI事業なども、連携することでノウハウを共有できるといったビジョンを描いている」とした。
 大型工事の受注については「新会社自体が受注できるように準備するには相当時間がかかる。新会社が(各社の工事に)どのように絡み、利用されるかといった運営ルールを作りながら、ノウハウ、知恵を出していきたい。ただ、売り上げばかりを追いかけることは考えていない」との見解を示し、「合併する前提では進んでいない」とも。
 大規模自然災害への対応については「県域を越えた機動的な支援体制を構築し、物資、人材、機材をスピーディーに投入できるネットワークを整備する。金融機関による安定した経営基盤と信用力を融合し、災害への強靱な備えを持つ」とした。『新たな共創プラットフォーム』とも表現し、「防災インフラの高度化、再生可能エネルギーの活用といった取り組みを加速させる。DX(デジタルトランスフォーメーション)によって建設現場の生産性向上や次世代の人材が誇りを持って働ける環境づくり、地元雇用の創出に注力する」と語った。
 足立部門長は、みずほ銀行の役割について「47都道府県全てに拠点を構える唯一の銀行として、7社の取り組みに共感して出資する。各種アドバイザリーやネットワークを駆使した体制構築、信用力の補完、新しいビジネスモデルの開発サポートに取り組む。イノベーション企業との非常に強い接点を持っており、技術革新やDXの促進に資金調達にとどまらないサポートができれば」と説明した。陰山社長も「アプリ開発やAI(人工知能)、ロボットの活用などにチャレンジし、共有することで成長したい」との認識を示した。
 今後の見通しについて足立部門長は「ある程度、軌道が安定してくれば、参画企業が増えるかもしれない。その中で、コーポレート機能を集約すれば非常に経営が効率化できる」と述べた。他地域での同様の取り組みの可能性にも言及し、「現時点では、東北以外で同様のことは考えていない。ただ、TACがしっかり社会課題を解決するモデルケースになって、他エリアでもニーズがあれば、頑張ってみたいという思いはある」と前向きな姿勢を見せた。