就任インタビュー・国土交通省不動産・建設経済局長 楠田幹人氏 | 建設通信新聞Digital

7月23日 水曜日

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就任インタビュー・国土交通省不動産・建設経済局長 楠田幹人氏

【標準労務費の運用に万全期す/価格転嫁、賃上げへ共通認識を】
 1日付で就任した楠田幹人国土交通省不動産・建設経済局長は18日、日刊建設通信新聞社などの共同インタビューに応じた。12月までに全面施行する改正建設業法で規定する労務費の基準(標準労務費)は、国が整備するガイドラインや契約・支払い段階それぞれの実効性確保策を通じ、円滑な運用に万全を期す構え。「処遇を確保しなければ建設業が持続しないという法改正時の問題認識に立ち返り、発注者、元請け、下請けと業界全体で取り組まなければならない」と決意を示す。
 所管する建設業、不動産業とも社会経済情勢の動向に敏感な分野と捉える。その上で建設業については価格転嫁の定着と、持続的な賃上げによる担い手の確保を大きな課題と受け止め、「サプライチェーン全体で共通認識を持ちながら取り組むことが重要だ」と強調する。また、「建設業と不動産業は非常に関わりが深いが、必ずしも利害が一致しない場面もある。互いを理解し合い、どちらも発展できるよう、行政として役に立てるところでしっかりと取り組んでいきたい」と抱負を語る。
 今後の建設業政策の方向性を定める上で、6月に発足した有識者による勉強会での議論は「大変重要になる」と断言する。高度化する災害対応、新技術の活用、事業承継、スタートアップ(新興企業)の興隆といった建設業を取り巻く課題を列挙し、「情勢が変化する中、担い手確保以外にも建設企業の技術と経営について求められる方向性を幅広く議論してもらい、今後の制度改正や政策への土台にしていきたい」と意気込む。
 2026年度までの3カ年を「メリット拡大フェーズ」と位置付けて取り組みを進める建設キャリアアップシステム(CCUS)については、「現時点ではまだ道半ばにある」と認識。レベルに応じて手当を支給する企業の増加などを例に挙げ、「少しずつ取り組みは進んでいるが、さらに加速させてメリットを広げ、最終の26年度には定着したといえる段階を目指していく。CCUSの導入にちゅうちょしている企業にも意味があると感じてもらえる取り組みをしていかなければならない」と力を込める。
 27年度から始まる育成就労制度の建設分野の制度運用に関しては、6月に設置した有識者による検討会で議論を深めていく考えで、「関係者や有識者の意見を聞き、業界としての合意形成を図りながら準備を進めていきたい」と説明する。検討会でも主要な論点としている外国人材の中長期の育成は、人材獲得を巡る国際間競争で日本の強みになるとし、「賃金水準だけでは勝負がしにくくなっているが、育成の仕組みを取り入れているのは他国でもあまりない。それを一つの売りにして外国人材を円滑に確保していきたい」と前を向く。