【事前防災への投資が必要/気候変動に見合った整備推進】
1日付で国土交通省水管理・国土保全局長に就任した林正道氏が29日、日刊建設通信新聞社などの共同インタビューに応じた。激甚化・頻発化する災害、インフラ施設の老朽化、人件費、資材費などの高騰による物価高の“三重苦”に直面する中、事前防災に向けた政策の重要性を強調する。「災害復旧のようにマイナスになったものをゼロに戻すのは大きなロスとなる。長期的に見て、今しっかり事前防災に向けて投資することが将来の財政負担の軽減につながり、何より住民の生命や財産を守ることができる」と訴える。
8月末の概算要求に向けて作業を進めているが、「今までと同様の予算規模だと三重苦への対応が間に合わない可能性がある」と見据え、少しでも事前防災のために必要な予算が確保されるよう力を注ぐ。6月には5年間で20兆円強を見込む国土強靱化実施中期計画が閣議決定したことから「計画の初年度となる26年は非常な大事な年だ。ここでしっかりと枠をつくる」と気を引き締める。
流域治水の加速化に向けては気候変動による外力の変化を的確に把握し、その流域ごとに必要な整備をしっかり位置付けていく方針だ。「水害の頻度が増える見通しであるならば『粘り強い堤防』を整備するなど、気候変動の外力に見合った適切な整備を模索していく」と説明する。
流域総合水管理の実現も急ぐ。「水害に備えて事前放流を定着させたり、ハイブリッドダムを運用することで地域の発電量を増やしたりするなど、治水と利水、環境の三つが連携していくことが大切だ」と指摘する。
建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みではBIM/CIMの積極的な活用に注目する。「設計施工から維持管理まで一貫したデータの連携により、計画段階や管理段階でも効率化ができるところがたくさんある」と強調する。
1月に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け、改めてインフラの老朽化に真摯(しんし)に向き合う。「八潮市の事故は下水道管に原因があると見られるが、老朽化はどの分野にも当てはまる。事故を通じて得られた知見で河川分野にも展開できるものはしっかり取り組む」と意気込む。
災害に対しては災害対策基本法などの改正法に基づき、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)の予備隊員制度やアドバイザー制度を創設するなど発災時の対応力の引き上げにも取り組んでいる。「早く現場で実装できるようにし、地域の建設業などと協力しながら復旧復興に貢献できる体制をつくりたい」と力を込める。
国土強靱化や災害時の対応を担う地域建設業に対しては、「これからも持続的に成長し、健全に発展していく必要がある不可欠な存在で、社会全体でその認識を共有してほしい」と望む。受発注者双方が連携し、担い手確保を含め健全な経営ができる環境を整えていく考えだ。
1日付で国土交通省水管理・国土保全局長に就任した林正道氏が29日、日刊建設通信新聞社などの共同インタビューに応じた。激甚化・頻発化する災害、インフラ施設の老朽化、人件費、資材費などの高騰による物価高の“三重苦”に直面する中、事前防災に向けた政策の重要性を強調する。「災害復旧のようにマイナスになったものをゼロに戻すのは大きなロスとなる。長期的に見て、今しっかり事前防災に向けて投資することが将来の財政負担の軽減につながり、何より住民の生命や財産を守ることができる」と訴える。
8月末の概算要求に向けて作業を進めているが、「今までと同様の予算規模だと三重苦への対応が間に合わない可能性がある」と見据え、少しでも事前防災のために必要な予算が確保されるよう力を注ぐ。6月には5年間で20兆円強を見込む国土強靱化実施中期計画が閣議決定したことから「計画の初年度となる26年は非常な大事な年だ。ここでしっかりと枠をつくる」と気を引き締める。
流域治水の加速化に向けては気候変動による外力の変化を的確に把握し、その流域ごとに必要な整備をしっかり位置付けていく方針だ。「水害の頻度が増える見通しであるならば『粘り強い堤防』を整備するなど、気候変動の外力に見合った適切な整備を模索していく」と説明する。
流域総合水管理の実現も急ぐ。「水害に備えて事前放流を定着させたり、ハイブリッドダムを運用することで地域の発電量を増やしたりするなど、治水と利水、環境の三つが連携していくことが大切だ」と指摘する。
建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みではBIM/CIMの積極的な活用に注目する。「設計施工から維持管理まで一貫したデータの連携により、計画段階や管理段階でも効率化ができるところがたくさんある」と強調する。
1月に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け、改めてインフラの老朽化に真摯(しんし)に向き合う。「八潮市の事故は下水道管に原因があると見られるが、老朽化はどの分野にも当てはまる。事故を通じて得られた知見で河川分野にも展開できるものはしっかり取り組む」と意気込む。
災害に対しては災害対策基本法などの改正法に基づき、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)の予備隊員制度やアドバイザー制度を創設するなど発災時の対応力の引き上げにも取り組んでいる。「早く現場で実装できるようにし、地域の建設業などと協力しながら復旧復興に貢献できる体制をつくりたい」と力を込める。
国土強靱化や災害時の対応を担う地域建設業に対しては、「これからも持続的に成長し、健全に発展していく必要がある不可欠な存在で、社会全体でその認識を共有してほしい」と望む。受発注者双方が連携し、担い手確保を含め健全な経営ができる環境を整えていく考えだ。