就任インタビュー・国土交通省住宅局長 宿本尚吾氏 | 建設通信新聞Digital

7月31日 木曜日

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就任インタビュー・国土交通省住宅局長 宿本尚吾氏

【脱炭素へウイングを拡大/維持管理・流通が大きなテーマに】
 1日付で就いた宿本尚吾国土交通省住宅局長は29日、日刊建設通信新聞社などの共同インタビューに応じた。建築物省エネ法と建築基準法の改正法が4月に全面施行し、原則全ての新築建築物で省エネ基準適合が義務化された。「省エネの取り組みについてはある程度道筋がついた。今後は建築物のライフサイクルアセスメント(LCA)など脱炭素にウイングを広げていく」と力を込める。
 省エネ基準適合の義務化に関しては「2000年に品確法を施行して以来、性能表示制度や長期優良住宅認定制度などを創設し、質を上げるための物差しをつくり、評価する人を育て、誘導を進めてきた。25年かけて義務化の体制を整えることができた」と振り返り、市場の環境整備が着実に進んでいることを強調する。今後は「維持管理や既存住宅の流通がこれからの住宅施策の大きなテーマとなる。住生活基本計画を見直す中でしっかり議論していく」と意気込む。
 市場の環境整備ではストック型社会への対応も必要となる。「既存住宅流通を促進するために、建築基準法が障壁となる場面も出てくるだろう。規制の合理化など、住宅政策と建築政策が一体となって考えていかなければならない」と見通す。
 人口減少に伴う空き家の問題にも目を向ける。「戦後に大量に供給した住宅が空き家となる可能性がある。時間をかけて空き家を利活用する仕組みを考えていく」と力を込める。
 省エネ基準適合の義務化に伴い、確認申請の4号特例が縮小された。その背景には建築士の資質や能力が向上し、その能力に応じて社会的な地位が向上したことを挙げる。一方で、今後については建築士の担い手不足を踏まえ、「今の建築確認の水準を維持することには一度立ち止まって考えなければならないだろう」と指摘する。「人口が減少する中で、建築士に任せられることと、行政が担うことをうまい案配で定めなければならない」と展望する。
 50年のカーボンニュートラル実現に目指し、ライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)を算定・評価する建築物のLCAについて、有識者会議で制度化に向けた議論を深めている。ライフサイクル全体で脱炭素を進めるためには、建築士が先導して取り組む必要性を指摘する。耐震性など建築物に求められる他の性能などとトレードオフの関係にあることについても「建築士がコストを含めて施主のリクエストに応じながらうまく折り合いをつける必要がある。建築士の技量によるところが大きい」と語る。
 建築BIMについては「LCAもBIMの活用を前提に議論が進んでいる。BIMがなければ机上の空論に終わる」と話し、これからの建築において必要不可欠なものだと認識する。29年春のBIMデータ審査開始を目指すが、データ入力の手間などの課題があることを明かし、「各方面の兼ね合いを見ながら検討していく」と述べた。