そこが聞きたい・東急建設執行役員安全環境本部長 山中 達也氏 | 建設通信新聞Digital

8月1日 金曜日

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そこが聞きたい・東急建設執行役員安全環境本部長 山中 達也氏

【安全環境本部の役割は?/成長と持続可能性に直結】

 東急建設の山中達也執行役員安全環境本部長は、「安全と環境は企業の成長と持続可能性に直結するだけに、かじ取りを誤ると社会的信用を失うリスクがある」と気を引き締める。重要な役割を担う部署だからこそ、「気張らず、当たり前のことを当たり前に取り組む」と“平常心”を心掛け、組織運営に当たる山中本部長に、今後の取り組みなどを聞いた。 今後の建設市場について、「設備投資は旺盛で、引き続き需要が見込まれ、受注環境は良好だ」とみる一方、「資材や人件費の高騰による物価上昇に加え、人的リソースやドライバーの不足でサプライチェーンの維持が難しい状況となっており、安全・安心がおびやかされることも考えられる」と懸念を示す。
 「安全は経営の根幹で、最優先される事項であり、その安全文化を醸成する重要な役割を当本部は担う」とし、同社が定める安全に関連するルールを順守し、基本に立ち返ることを推進していく。そのためには、「技術員の意識改革が大切だ」と指摘し、行動を変える施策を打ち出したい考え。「最先端で働く職人の窓口である技術員の意識が変われば、職人の意識も変わるだろう」と期待を寄せる。
 一方、環境面を見ると、国土交通省は、建物の施工から解体までに排出するCO2量の算定・評価を義務付ける法案を打ち出している。環境配慮に対する建築主からの要求が大きくなっており、脱炭素への取り組みが加速している。同社の長期経営計画である『VISION2030』でも環境に関連する方針を掲げるが、「各部署の小さな取り組みを大きな推進力になるようにサポートしていくのが当本部の役割だ」と説明し、「環境への取り組みが、将来への投資であると伝えることが大切」と力を込める。
 ただ、「現場の環境活動は評価されにくい現状がある」と吐露する。それを解消するため、「1年間を通じてごみゼロや低炭素のカーボン燃料の導入など、現場の環境配慮の取り組みを表彰する制度を創立したい」との考えを明かす。「良い取り組みはフィードバックするなど、現場の取り組みを安全環境本部としてピックアップしていきたい」と語る。
 また、現場の技術員に環境への取り組みを納得してもらうことが不可欠との認識から、「環境配慮の重要性や、その先の未来について丁寧に説明し、自分事として捉えてもらうようにする」とし、環境配慮に対するマインドの変革を促す。
 各支店や土木・建築事業本部の安全環境に関する部門との密なやり取りにも気を配り、「多くの現場を歩いてさまざまな人の意見を吸い上げて、施策や方向性を示していく」構えだ。例えば、「現場の巡視には、土木・建築事業本部が推進したい方針に、安全環境本部の方針も盛り込み、目線を合わせて実施したい」と前を向く。

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 (やまなか たつや)1987年3月芝浦工大建築工学科卒。88年4月東急建設入社。2018年10月東日本建築支店第一建築部部長、23年4月建築事業本部事業統括部事業推進部部長などを経て、25年4月から現職。趣味は散歩と読書。座右の銘は「和敬清寂」で、「初めて会う人が集まり、互いに認め合いながら、ベクトルを合わせてものづくりをする現場に、言葉の意味がぴったりだ」とし、所長時代から「平常心」と共に現場に掲げていた。65年8月19日生まれ、59歳。