就任インタビュー・国土交通省官房技術審議官 小林賢太郎氏 | 建設通信新聞Digital

8月4日 月曜日

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就任インタビュー・国土交通省官房技術審議官 小林賢太郎氏

【業界革新へ国が先導/自治体に休日確保など浸透】
 7月1日付で就任した小林賢太郎国土交通省官房技術審議官は同月30日、日刊建設通信新聞社などのインタビューに応じた。直轄事業の発注行政をつかさどる立場として「建設業界全体の環境を変えていくため、国が先導的な役割を努める必要がある」と強調。現場の休日確保や新技術活用などの取り組みを率先して展開し、自治体に広く浸透させることを目指す。
 発注行政を所掌する職務は2023年まで担当した関東地方整備局企画部長以来となる。「当時と比べると進んだ分野もある一方、課題がある分野もある。新たな制度や技術を活用する余地はまだまだあり、積極的にチャレンジしていきたい」と抱負を語る。
 直轄土木工事では週休2日が定着し、25年度から土日休日の完全週休2日を本格展開する中、「より多様な働き方の在り方も考えていきたい」と展望する。「例えば、酷暑の夏季に土日の週休2日を確保しながら工事をするより、その期間を休んで工期全体で週休2日を確保するという考え方もある。積雪寒冷地では逆のケースもあり得るのではないか」と指摘し、現場実態に即した柔軟性のある働き方を追求したい考えを示す。
 現場の生産性向上に向けた取り組みも重要なミッションの一つとなる。「i-Construction2.0では生産性だけでなく省人化対策も位置付けられた。技術的な支援だけでなく発注方式でもしっかりと取り組みを進めていく」と意気込む。その鍵として、改正公共工事品質確保促進法を踏まえて新設した総合評価方式の技術提案評価SI(エスイチ)型を挙げる。25年度から山岳トンネル工事で自動施工技術の活用を促すため試行しており、「これまでは費用を伴う技術提案がしにくかった。自動施工技術などを現場に取り込めるこうした入札方式を生かしていきたい」と強調する。
 現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に向けて先進技術を活用する姿は、担い手確保にも寄与すると見る。「現場作業の効率化はもちろん、建設業を若者にアピールできる要素もある。両輪で進めていきたい」と前を向く。
 8月末の概算要求に向けて、資材価格や労務費の上昇を踏まえた公共事業予算の確保に意欲を示す。「第1次国土強靱化実施中期計画では資材価格・人件費高騰の影響を予算編成過程で適切に反映すると明記している。計画に対する自治体首長からの期待も大きい。防災・減災対策や老朽化対策を進めるためにも必要予算をしっかり確保したい」と気を引き締める。
 「建設業は平時にはインフラの整備・管理、災害時にはその対応に当たり、地域の安心・安全を守っている」と認識する。秋田県建設部長を務めていた時に豪雪を経験。除雪に当たる建設業の姿を目の当たりにして「地域を守る心意気を感じた」と振り返り、社会経済活動を支える建設業の役割について社会への理解を促していく考えだ。