連載・人事戦略2024(1)ゼネコン | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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連載・人事戦略2024(1)ゼネコン

【大成、鹿島は400人超え/新卒採用増加が鮮明】
 建設産業分野の2024年4月入社の新卒採用者数は増加傾向が鮮明となった。事業規模の拡大や安定的な事業継続を目的に高い水準での人材確保を目指す企業が多い。一方、売り手市場は依然として続いており、採用活動の早期化や理系学生などの減少を理由として目標数の確保に苦慮する声も聞こえる。全6回でゼネコン、建築設計事務所、建設コンサルタント、設備会社、道路舗装会社、メーカーの主要企業へのアンケートを基に、採用状況や人事戦略を連載する。 日刊建設通信新聞社が大手・準大手ゼネコン31社を対象に実施した人材採用調査によると、24年4月の新卒採用者数は全体の合計で前年の実績と比べて8.9%増の3920人となった。全体の3分の2に相当する20社が採用者数を伸ばすなど、積極姿勢に衰えは見られない。
 新卒採用人数が最多となったのは432人の大成建設で、前年から116人増やした。67人増で401人となった鹿島とともに400人を超え、両社ともに「予定どおり確保できた」と回答している。他方、全体の7割の企業は「最終的に予定枠を確保できなかった」と苦戦ぶりを口にする。就職活動の早期化や理系・技術系人材の確保が難しくなっているという意見が上がっている。
 中長期の採用者数は新卒で12社が「増やす予定」、18社が「現状維持」とした。「グローバル総合職を設置し、外国籍の人材登用を進めている」(五洋建設)や「全社員リクルーター制度の実施」(東亜建設工業)といった独自の取り組みで採用増に力を注ぐ。中途採用は13社が「増やす予定」、17社が「現状維持」で、一度退職した人材を再度採用するカムバック制度を導入するなど、即戦力人材の確保に力を入れる企業も少なくない。
 採用者数の確保や人材流出を防ぐ観点から、23年度はほぼ全ての企業がベースアップなどの賃上げに取り組んだ。物価水準や他産業を含めた人材獲得競争に対応するため、継続した賃上げの必要に迫られている。24年度も初任給を3万円引き上げるとした鹿島と大林組、五洋建設をはじめ、戸田建設、前田建設、西松建設、東鉄工業、東洋建設、佐藤工業、大豊建設、ピーエス三菱の11社が既に賃上げを決めている。残る20社も検討を進めていると回答した。
 24年度からはゼネコンに時間外労働の罰則付き上限規制が適用開始となる。賃金に加え、休暇がしっかりと取れることが今の学生にとっては入社の重要な判断指標となっていることは言うまでもない。各社前倒しで労働時間削減や外注化などの取り組みを進めてきたが、新年度以降、法規制が適用となることでその進展度合いが客観的に明らかとなる。
 処遇改善や働き方改革の動きをコストとして捉えるのではなく、会社の貴重な財産である人材への投資に位置付け、取り組みを進めることが今後さらに重要になってくる。 (西山和輝)