連載・人事戦略2024(設計事務所) | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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連載・人事戦略2024(設計事務所)

建築設計事務所の新卒・中途採用状況
【設備以外にも人材不足広がる/約半数が新卒採用増】
 日刊建設通信新聞社が建築設計事務所21社に実施した人材採用調査によると、約半数の10社が4月の新卒採用予定者を前年より増やした。大半の18社が「予定枠を確保できた」と回答しており、全体では順調に採用活動が進んだ模様だ。分野別では設備に加えて、意匠・構造で人材不足を感じ、採用を強化する動きが出ている。
 採用予定者数は、2023年に最多だったNTTファシリティーズが前年から59人減とほぼ半減させた。電力業務を担う技術者採用を配属先のグループ会社で実施することにしたため。ただ、21社の合計は418人で、23年の427人と比べて9人減にとどまった。
 34人増と採用者を大きく増やした日建設計を筆頭に、10社が全体をけん引した。多くが予定枠を確保できたが、日建設計は「予定枠の確保に苦労した」と回答し、「全体のエントリー人数が減少しており、厳しい状況」とした山下設計など、5社が「予定枠の確保に苦労した」と回答した。
 中長期の新卒採用方針は、「現状維持」が14社、「増やす予定」が6社だった。中途は「維持」が13社、「増やす」が8社だった。「教育訓練体制の充実、適正な人事評価制度の導入、柔軟な働き方への対応など」(梓設計)と労働環境・福利厚生の改善を挙げた事務所のほか、「インスタグラムやホームページでの情報発信、会社説明会の実施」(久米設計)など情報発信や学生との接点を強化する動きも見られた。
 意匠・構造・設備・都市計画のうち、設備で人材不足を感じているとした事務所は19社。昨年の16社からさらに伸び、人材獲得競争が激化している。このほか、意匠が14社、構造は12社、都市計画は10社と人材不足は設備以外にも広がっている。
 カーボンニュートラルへの対応などを背景に18社が設備の採用を強化するとした。このほか、構造11社、意匠10社、都市計画9社と続き、「意匠はPPPやプロポーザルなど業務提案の増加、構造は物流施設や工場などの大型化、設計期間の長期化」(あい設計)、「既存社員の高齢化、周辺企業と競合激化」(東畑建築事務所)などと採用強化の理由を挙げた。
 職場の魅力向上を目指して23年度は9割を超える19社が基本給の引き上げなどの賃上げを実施した。24年度も6社が既に実施を決め、11社が「検討している」とした。具体的な検討内容は「基本給5%のベースアップ」や「大卒初任給1万7000円アップ」など。
 採用増の背景にクライアントのニーズの多様化や複雑化を挙げる事務所も複数あった。そこには、目の前の旺盛な建設需要に応えるだけではなく、幅広い人材を確保してより川上方向に仕事の幅を広げようという狙いがある。社員が増える中、教育制度の見直しやオフィスのリニューアルに取り組む事務所も多く、待遇と働く環境の両軸で人への投資が加速している。
(武内翔)