【記者座談会】"使う側"の取り組みに注目 『建設工事における適正な工期設定のためのガイドライン』  | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【記者座談会】“使う側”の取り組みに注目 『建設工事における適正な工期設定のためのガイドライン』 

8月28日に開かれた中央建築士審査会。改正方針の議論は次回に持ち越した


A 政府は、長時間労働の是正や休日の確保など、国策として「働き方改革」の推進に力を入れる中、7月に立ち上げた「建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」(議長・野上浩太郎内閣官房副長官)が、関係省庁の申し合わせ事項として『建設工事における適正な工期設定のためのガイドライン』をまとめたけど。
B ガイドラインは、民間工事を含めたすべての建設工事で取り組む“基本原則”となる考え方を示したものだ。受発注者が対等な立場で合意した公正な契約の締結を求める中で、不当に低い請負代金、不当に短い工期での請負契約の締結を禁止している。地方自治体の発注工事や民間工事に対する“率先行動”として、週休2日の推進など働き方改革の実現に取り組む国土交通省の直轄工事を参考に広く受発注者の双方に、その取り組みを促す内容になっている。
C 公共工事に比べて、契約の実態が見えにくい民間工事や下請契約など、いわゆる“民民契約”も対象にしている点で、このガイドラインが持つ意味は大きい。民間工事を対象にした契約の適正化や品質の確保に関するフォローアップの仕組みは、これまでほとんどなかったからだ。
A 実効性という意味ではどうだろうか。
D ガイドライン自体に法的な強制力がないという点で言えば、あくまでも要請レベルの感は抜けきれないが、ガイドラインの策定はあくまで出発点という位置付けだ。不動産、鉄道、ガス、電気といった各分野ごとの連絡会議の立ち上げや、各業界団体を通じたガイドラインの普及を図っていく中で、ガイドライン自体のレベルアップ(強制力の強化)も見込まれる。
B その意味で言えば、ガイドラインの実効性をどう担保していくかは、ガイドラインを使う受発注者の双方にかかっていると言ってもいい。どう対応していくのか、業界団体を中心とした“使う側”の取り組みに今後の注目が集まる。

「働き方改革」にもつながる業務報酬基準の改正

A ところで、国交省の中央建築士審査会が2017年度の初会合を開いたが、建築設計・工事監理等の業務報酬基準(告示15号)の改正に向けた検討状況はどうだろうか。
E 実際の検討作業を進めている「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準(平成21年国土交通省告示第15号)検討委員会」に参加する設計関係7団体から紹介された企業に対して行ったヒアリングの結果が報告された。
F 中央建築士審査会の内容は非公開で詳細な内容は分からないが、冒頭に伊藤明子住宅局長は「建築士試験の受験者数の減少や建築士の高齢化の問題など、建築士そのものに関わる課題は、業務報酬基準に凝縮されて出てきていると感じている」と述べ、業務報酬基準改正の重要性を強調していた。
A 今後のスケジュールは。
E 中央建築士審査会で議論する予定だった業務報酬基準の改正方針は、年内に開催される次回に持ち越したが、全体スケジュールに大きな変更はないようだ。検討委員会が18年度前半までに業務内容や業務量を把握するためのアンケートを実施し、同年度中に審査会で改正案を検討する。
F 09年の旧建設省告示1206号の大改正以来、初の定期メンテナンスで、調査方法などが今後のひな形ともなりえるため、慎重に作業を進めているようだ。一方で、改正のポイントとなる現行基準と業務実態のかい離の是正は、政府が主導する「働き方改革」につながる話だけに、スピーディーな対応が求められるだろう。

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