◇早期復旧へ人員、予算の総動員を
A 石川県能登地方を記録的な豪雨が襲い、河川氾濫や土砂崩れで甚大な被害が発生した。震災からの復旧の最中だっただけに「なぜまた能登が」という思いを禁じ得ない。被災者の心情を考えると言葉もない。
B 現地では道路が寸断して孤立集落が発生したほか、断水が続いている。仮設住宅も浸水した。発災直後に輪島市に入った記者によると、浸水により道路が一面泥で覆われていたり、震災で損壊した護岸に積んでいた土のうが流されるなど、その爪痕は想像以上だったという。
C 豪雨災害で亡くなった方々の中には、震災によって崩れた国道249号中屋トンネルの復旧工事に従事していた方もいる。懸命な復旧作業によって25日には一部の車両の通行を再開する予定だった。被災地の日常を取り戻すため最前線で尽力していた中の事故だけに残念でならない。
A 今回の豪雨災害でも行政と建設業が連携し、道路啓開などの緊急対応に汗を流している。一方で工事従事者も自治体職員も被災者の一人であり、その疲労は想像に難くない。震災からの復興に向けた歩みを後戻りさせないためにも、被災地への充実した支援は不可欠だ。
B 能登半島地震の教訓を生かすため、現在、内閣府が中心となって災害対応の検証作業を進めている。今回のような地震と豪雨といった複合災害への備えや災害対応の在り方についても、改めて議論を深める必要があるだろう。
C 政府は豪雨災害の対応として予備費の活用を視野に入れている。まずは一刻も早い復旧に向けて人員や予算を総動員することが求められる。その上で、災害から人命や財産を守る国土強靱化の取り組みを一層加速させなければならない。
◇市町村は低調、体制確立が急務
A 能登半島で相次いだ自然災害でも浮き彫りとなったが、被害の最小化や早期の復旧を図るためにはインフラの老朽化対策が急務だ。各地の道路メンテナンス会議で対策が議論されているが、道路構造物の修繕状況はどうだろう。
D 8月に公表された道路メンテナンス年報によると、1巡目点検で判定区分III(早期に措置を講ずべき状態)、IV(緊急に措置を講ずべき状態)だった構造物の修繕の着手率は、国や高速道路会社が100%、自治体が83%だった。自治体のうち、都道府県・政令市は92%の一方、市区町村は78%と低い水準にある。
E 関東最多の63市町村を抱える埼玉県では、個別施設計画を策定済みの市町村がほぼ100%に達するが、計画に基づき道路構造物を着実に修繕できている割合はその半数にとどまる。深刻な予算不足が背景にあり、同県の道路メンテナンス会議ではある市の担当者から「草刈りにすら予算を充てられない」という声も上がった。
D 一方で軽微な損傷の場合は補修設計をせずに修繕に着手したり、管理している橋梁の統廃合を検討するなど、維持管理の工夫も報告された。高度な技術力が求められる修繕に新技術を導入する動きも出ている。
E 県内では包括的民間委託に取り組む自治体もある。他方、取り組んでいない自治体からは職員の技術力低下を懸念する声や、そもそも民間委託するための予算がないといった声も聞かれた。こうした傾向は他の都道府県でも共通するのではないか。
A 地域の持続性を高めるためには、地域を支えるインフラの維持が最重要となる。地域インフラ群再生戦略マネジメントに代表される効率的なメンテナンス体制の確立は待ったなしといえるだろう。