JR東日本と京王電鉄の2社が東京都渋谷区などで計画する新宿駅西南口地区開発事業のうち、先行整備する南街区の詳細が分かった。開発規模は延べ14万6050㎡。事務所やホテル、百貨店などで構成し、省エネルギー技術や再生可能エネルギーの積極利用も推進する。12月の着工、2029年3月の竣工を予定している。 同事業では、京王百貨店新宿店敷地と甲州街道を挟んで隣接する敷地約1.9haに再開発ビル2棟を建設する。南北両街区を合わせた規模は総延べ約29㎡を予定しており、設計は日建設計とJR東日本設計が担当している。
同事業での脱炭素化推進事項をまとめた「特定開発区域等脱炭素方針」によると、南街区の施設規模は、地下4階地上36階建て延べ14万6050㎡。地下はSRC造、地上はS造となる。高さ220m。事務所4万4900㎡、ホテル2万7100㎡、百貨店4万3760㎡、飲食店1万0940㎡、その他1万9350㎡からなる。総建築面積は6000㎡。
施設での年間エネルギー需要量は、電気が2万7199メガワット時、熱が8703万メガジュール。
29年の施設稼働時点では、電気再エネ利用割合の目標値を、10kWの太陽光発電設備に基づき0.03%と定めた。30年の運用時には低炭素電力の活用などによってさらなる温室効果ガスの低減を図るとともに、エネルギーマネジメントとAI(人工知能)空調で運用エネルギーを適正化し、不要な消費を抑える。
50年には、新たな省エネ技術の積極導入、再エネ由来の電力利用などの追加措置を講じることで、電力量に占める非化石電源の比率である「電源目標値」ゼロ%を目指す。
この実現に向けては、▽東京都建築環境計画書制度での複合用途建築物の段階3▽CASBEE(建築環境総合性能評価システム)Aランク▽事務所でのZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)Orientedの取得▽商業・ホテルなどでの最先端技術による省エネルギー化–を基本方針に定めた。
このほか、屋上緑化によるヒートアイランド対策、非常用発電設備とコージェネレーション設備により、非常時も約40%の電源確保なども方針に盛り込んだ。
北街区の予定規模は、地下3階地上19階建て延べ約14万1500㎡。高さは110mで、店舗や宿泊施設、駐車場などで構成する。上層部の複数フロアには屋外広場を設けるほか、2・5・9階にはテラスを整備し、隣接する新宿駅西口地区事業のビルと接続するなど、歩行者の回遊性を高める方針。建設地には現在、京王百貨店やJR東日本グループのルミネ新宿ルミネ1などが立地している。敷地面積は約1ha。
南街区での解体工事は大成建設が担当している。北街区を含む全体完成は40年代を予定している。
計画地は新宿区西新宿1、渋谷区代々木2。
東京都は4月、「地域におけるエネルギーの有効利用に関する計画制度」を改正し、同月1日より「地域における脱炭素化に関する計画制度」を施行した。延べ5万㎡を超える建築物を整備する特定開発事業者などを対象に脱炭素化方針や地域エネルギー計画書の作成を求めることで、脱炭素化対策の標準化、ゼロエミッション地区形成への土壌整備を進めたい考えだ。