【建築学会大会記念シンポ】若者が建築家・アーティストに真っ向意見! テーマは「若者そして未来を育てる」 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【建築学会大会記念シンポ】若者が建築家・アーティストに真っ向意見! テーマは「若者そして未来を育てる」

千葉氏(左)と野老氏

 「育てる」をメインテーマとした2017年度日本建築学会大会(中国)の記念シンポジウムは、特に「若者を育てる」に照準を当て、大学生・院生に地元の高校生やその父兄も加わってのワークショップや一流のアーティスト、建築家に次世代を担う若者がてらうことなく真っ直ぐに意見をぶつけることで「気づき」を深める場となった。
 「若者そして未来を育てる」と題して2日に広島市の広島国際会議場で開かれたシンポジウムでは、アーティストの野老朝雄氏が基調講演し、2001年9月11日の同時多発テロ以降、「繋げる事」をテーマに紋様の制作を始め、美術、建築、デザインの境界領域で続けている活動について紹介した。
 続いて建築家の千葉学東大教授が講演し、「一つひとつはありふれた片廊下の教室だが、それがどうつながるかで新しい関係をつくり、それによってまったく新しい場所や大学のあり方を提案できないかと考えた」という、『工学院大学125周年記念総合教育棟』などの自作と、建築の作法を説明。同教育棟のファサードパターン制作を手掛けた野老氏との協働について「僕らが建築をやりながら考えてきたものと野老さんが図形を通じて考える繋がりというものがいろいろなレベルでシンクロしてできた仕事」だと振り返った。
 これを受けたパネルディスカッションは、大久保孝昭広島大教授のリードで、地元の大学や高校で建築や美術を学ぶ5人が野老、千葉両氏に質問をぶつけ、創作や建築に対する姿勢を聞き取る形で進行した。
 「建築を目指したのは中学生の時。しかし挫折の連続だった」という千葉氏は、卒業設計に取り組んでいるが何をつくったらいいのか分からなくなっているという高校生からの問い掛けに、自身も「卒業設計は相当に悲惨だった」とし、「本当に悩んでまともな答えが出せなかった。それが財産になっている」と打ち明けた。その悔しさが「いまだに考える原動力になっている」のだと。
 さらに行き詰まったときの打開策を聞かれ、「歩き回ることと、トレーシングペーパーをもう一度重ねること。それを繰り返す」としたほか、「最近覚えた技がやたらとスタッフに話しかけること。話しているうちに自分の考えていることが整理されたり展開したりする」と語り、野老氏も「寝て1回断ち切る。もう一方で悩みまくることも有意義なこと」としつつ「建築に関係のない友人にまったく別の言語で話してみたら自分のやりたいことが見えてくるかもしれない」とアドバイスした。
 また、何がプロたらしめるのかというフロア参加者からの質問に千葉氏は「その線引きは分からないが、自分が世に送り出す建築はどんな状況でもあらゆるところに責任を持ちたい。そのために決断をいい加減にしない。建築をつくることは決断の連続であり、すさまじい数の決断をしていくことになるが、その一つひとつをいい加減にしないことが大事だと常に心掛けている」と応じた。

地元の若者からはストレートな質問が相次いだ

 最後に若者へのメッセージとして、野老氏は「よく観察すること。どう疑問を持つかが大切だ」とし、千葉氏は「若いうちに何でもいいから夢中になるものがあってほしい。そして建築をやめないでほしい。建築家になることをあきらめない人が建築家になるのだから」と呼び掛けた。

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