【新しい生活様式での建築とは】大成建設 「ニューノーマル・アーキテクチャー」作成 | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【新しい生活様式での建築とは】大成建設 「ニューノーマル・アーキテクチャー」作成

 これからのニューノーマル時代に求められる建築・設備とは何か――。そんな思いを込めて作成されたパンフレットがある。新しい生活様式のためのアイデア・技術を落とし込む大成建設の「ニューノーマル・アーキテクチャー」だ。新型コロナウイルスの世界的な流行をきっかけに社会が大きな転換点を迎えているいま、これからの“ニューノーマル建築”を描き出す。

 象徴的な事例の1つが、安全・安心な医療の提供として、新型コロナウイルスのような突発的なパンデミックへの備えが求められる「病院」での対応だ。

 設計本部の岡本憲文建築設計第五部長(医療福祉・教育文化担当)が「これからのニューノーマルの社会の中で、どのような病院が求められるのか。(施設・空間づくりを担うゼネコンの視点から)それを想像して練り上げたものになっている」と話すように、これからの施設整備に対する“ヒント”を示す。

左から龍氏、岡本氏、山﨑氏(撮影時のみマスクを外しました)


 実際に「どんな手段を講じれば、病院経営を守りながら、安全・安心な施設をつくることができるのか。医療サービスを受ける患者だけでなく、ドクターやスタッフの安全・安心の確保など、本当の意味で提供する施設のユーザーが安心できる空間づくりとは何かを考えた」という。

 行き着いた答えが、いわゆる外来ゾーンで感染や感染が疑われる患者を“分ける”ことで感染経路を確実に断つ考え方と、空調管理や間仕切りなどの工夫で感染症患者の受け入れに“備える”病棟ゾーンでの仕組みづくり。

 例えば、外来患者が入るスペースにサーモカメラによる発熱トリアージを配備。感染や感染が疑われる患者の隔離スペースを確保することで、一般患者と交錯しない動線計画を構築する一方、陽圧・陰圧をフレキシブルに切り替えることができる空調システムの導入によって感染症患者の受け入れに備えていく。

 「技術を効果的に使うことで2次感染への不安を取り除くことが重要。その延長線上にこそドクターやスタッフが安心して働ける施設環境を構築できる」(龍英夫設備設計第一部設計室長)。

 実際に人の所在を正確に検知することで照明や空調の強弱を調節する同社のオリジナル技術「T-Zone Saver」など、当初は省エネルギー化を目的に開発された技術であっても3密(密集・密接・密閉)の回避や人員密度に応じた空調(換気量)の制御など“パンデミック対応”に応用できるものは多い。

 山崎信宏設計戦略部クリエイティブ・デザイン室長が「ニューノーマルにどう向き合っていくべきかを考えたときにエンジニアとしても技術の応用や転用といった発想の転換が生まれる」とするように、従来の前提や常識が崩れるような社会の変化はこれまでにない“気づき”を促す。

 これからニューノーマル社会の建築のあり方を問い直す中で生まれた、そうした“気づき”こそが大成建設が持つ提案力の源泉になっている。

 商業施設や生産施設、オフィス、学校、病院など9つの代表的な施設用途(9枚)+共用エリア(1枚)の計10枚のシートで構成。コンセプトである『大成建設が考える 新しい場所づくり』をテーマにニューノーマル時代の建築に“生かせるアイデア”と“一押しの技術”を体系的に落とし込んでいる点が特徴だ。

 キーワードとなっているのは、これまでのスタイルに工夫を加える「Arrange」、従来の常識を超えて新たなスタイルを模索する「Beyond」、空間もココロもキレイにする「Clean」、心地の良い「Distance」、目に見えないものを可視化する「Envision」で構成する新しい場所づくりのABC。

 「3密の回避が叫ばれる中で空間づくりに着目した。設備など機械的・技術的な解決だけでなく、設備設計、建築設計、意匠設計の各部門からアイデアを集める中で、トータルとして新しい生活様式=ニューノーマルに向き合った」(山崎氏)という。

 パンフレットに盛り込まれた内容が「決してすべてではない」としながらも、ニューノーマルへの対応をわかりやすく示すことで、プロジェクトを計画・立案しようという顧客への強力なサポートになっていることは間違いない。



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