【BIM未来図】東洋建設(中) デザインレビュー出発点に監理者検査へ/進展するACCの情報共有 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【BIM未来図】東洋建設(中) デザインレビュー出発点に監理者検査へ/進展するACCの情報共有

 東洋建設では、オートデスクが提供する建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』の施工管理ソリューション『Build』を監理者検査に活用する試みが動き出そうとしている。トライアル現場を指揮する関東建築支店建築部の岡田文人作業所長は「次につながる成果を導きたい」と決意をにじませる。

 対象現場は7階建て延べ4000㎡の保管倉庫。「建設の進め方は事務所ビルに近いが、温湿度管理を徹底する高度なプロジェクトになる」という。同社の設計施工案件として、2023年11月に着工し、25年1月の引き渡しを予定している。現場開設と同時に、建築事業本部設計部DXデザイングループがACC上に現場の専用フォルダーを構築し、協力会社だけでなく、発注者ともクラウド環境で情報を共有してきた。

Build活用画面

 発注者には六つのアカウントを付与した。作業所主任の古谷亮氏は「あらかじめACCの使い方を説明した上で、情報は全て専用フォルダー内に格納し、そこで変更点などの指示を受けており、発注者とは円滑な情報共有が実現している」と説明する。現場担当として初めてACCを活用した作業所の三田悠斗氏が「最初は不安もあったが、無理なく活用ができている」というように、関係者間の情報共有ツールとしてACCが機能している。

 協力会社とは指摘事項にかかわる部分をACC上で共有してきた。各社用の専用フォルダーを作成し、そこにBIMデータなどを格納してもらい、指摘事項をフォルダー内で指示してきた。アカウント数は現場関係者トータルで90を超えた。設計担当が主体的に進めるBIM調整会議もACC上で進めており、現場の円滑な運営を下支えしている。

 建築事業本部設計部では5年前からデザインレビューをクラウドプラットフォーム上で取り組んでおり、先行してACCを活用してきた。大谷健司設計部部長は「デザインレビューで一定の成果を得られたことがきっかけとなり、監理者検査へのチャレンジにつながった。きちんと検査のスキームが確立できれば、業務自体をより効率化でき、品質面でも成果を見いだせる」と手応えを口にする。

 12月から取り組む監理者検査を前に、岡田氏は「検査で抽出した指摘事項をACCのBuild上に反映し、現場関係者間で共有することは可能」と考えているが、次のステップとして「是正部分を協力会社に共有し、手直しした結果をどう効率的にBuildに集約するかがポイントになる」と焦点を絞り込む。

 作業工種は細かなものを含めれば50を超え、しかも1工種当たりの職人は複数人に達する。その全員にACCのアクセス権限を付与することは難しい。「当然ながら協力会社全てがアクセス環境を確保することは難しく、是正部分を反映したシートを手渡して取り組んでもらうような進め方が現実的」とイメージしている。

 監理者検査へのBuild活用を後押しするDXデザイングループでは、専用のスマートフォンやタブレット端末を提供し、是正部分を把握するような仕掛けも検討しているが、そのためにはアクセス方法や是正後の対応方法なども事前に習得してもらう必要がある。岡田氏は「今回のトライアルは監理者検査が対象になるが、このほかに作業所検査、建築部検査、そして最後に竣工検査も控えており、最終的にはそれら全てに対応するようなシステムにならなれば最大限の効果は発揮できない。だからこそ次につながる成果や課題を示したい」と力を込める。

トライアル現場の事前検討



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