【ワールドスキャンプロジェクト】ピラミッド・沈没船調査とコンテンツ分野をつなぐ | 建設通信新聞Digital

6月1日 日曜日

公式ブログ

【ワールドスキャンプロジェクト】ピラミッド・沈没船調査とコンテンツ分野をつなぐ

ピラミッド3D処理画面 ©WORLD SCAN PROJECT

ワールドスキャンプロジェクト(東京都新宿区、上瀧良平CEO)は、世界各地の遺跡を対象に、ドローンや3Dスキャン技術を活用した調査やデータ制作を進めている。同社の市川泰雅CTOは、エジプトのギザ三大ピラミッドにおける無人航空機(UAV)を使用した世界初の3Dデータ計測に参画しているが、考古学研究への利用にとどまらず、コンテンツ分野での活用も見据えている。

エジプト調査中の市川氏 ©WORLD SCAN PROJECT

◇世界の遺跡をアーカイブ化

 市川氏は大学卒業後にCGアーティストとして活動しつつ、2016年からエジプトの調査に従事。17年にギザ三大ピラミッドを計測した。その後、エジプトや他地域で遺跡の調査、デジタルアーカイブ化に携わっている。

 一方、3Dデータと親和性のあるVR(仮想現実)技術やメタバースなどへの社会的関心が高まっていった。これを背景に同社の米国本社が19年、日本本社が20年に設立された。同社は、建設現場の資機材や貨物船の積み荷を運搬するUAVなど、産業用のロボット、ドローンの設計や開発も手掛ける。

蕨を調査中のドローン映像 ©WORLD SCAN PROJECT

 
 
 
◇海底の船体調査にも活躍

 遺跡の管理や研究は、経年変化との戦いという面がある。例えば、同社も調査を行うペルーのマチュピチュ遺跡では浸食が著しく、保護活動のため、23年に一部を閉鎖した。「特に南国では、遺跡が崩壊してしまう場合もよくある」とも。ただ、もっと微細な変化も生じており、その把握に3Dスキャンが活躍する。壁のミリ単位のクラック発生など、人の目で発見が難しい変化も定期的な調査を重ねてスキャンデータを比較すれば発見できる。

 UAVはヘリコプターより小回りに優れ、遺跡から数メートルを飛行できる。スキャン用機器や、大量の写真を合成して3DCGを作成するフォトグラメトリー用撮影機器を近づけての調査が可能だ。一方、水中ドローンは人が潜水困難な水深での調査に対応する。20、21年に同社が九州大学浅海底フロンティア研究センターと松江市沖を共同調査した結果、水深約96-180メートルにかけて船体を発見し、1927年に沈没した駆逐艦「蕨」と特定。調査データを元に、2023年に同艦の3Dモデルを作成した。

海底調査を元に制作した蕨の3Dデータ ©WORLD SCAN PROJECT

◇希少性が収益化の鍵

 データの用途については、考古学研究や教育のほか、ゲームアプリやメタバース向けコンテンツにも活用する。

 鍵はデータの希少性だ。「例えば、エジプトでは通常ならドローンの飛行だけでなく機体の国内持ち込みが違法だ。そこで調査のため、エジプト政府の考古省や軍、警察など当局の許可を得る必要がある」と語るように、世界各地の遺跡は文化財保護の面でもハードルがある。これらを越えてコンテンツ制作まで実現することは容易ではない。「ここでしか見られないコンテンツを提供できる」と力を込める。

 同社やグループ会社がリリースするアプリ、メタバース空間や、NFT(非代替性トークン)を通してコンテンツを提供し、コンテンツ視聴者向け広告などの形でマネタイズ(収益化)していく方針だ。

 

【公式ブログ】ほかの記事はこちらから

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら