【データがひらく未来】AU2024inサンディエゴ④ 米建設会社 情報を一元管理/デジタル技術を徹底活用 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【データがひらく未来】AU2024inサンディエゴ④ 米建設会社 情報を一元管理/デジタル技術を徹底活用

 米カリフォルニア州の建設会社「DPRコンストラクション」は、建設現場にデジタル技術を積極導入し、効率的な設計・施工プロセスを構築している。同州サンフランシスコでは、1階がS造、2階が木造の既存建物を改修し、医療施設を整備するプロジェクトが進行中だ。ここでは、建設クラウドプラットフォーム「Autodesk Construction Cloud(ACC)」を活用。BIMモデルをはじめとした設計施工に関するさまざまな情報を一元管理している。

 レーザースキャンにより取得した既存建物の情報や進捗管理状況などをデータと捉え、ACC上に保存し、利用。関係者間でデータ共有ができるため、例えば設計段階では、建築家が入力した内容をすぐにエンジニアが把握できるというメリットがあった。質問などのやりとりも迅速に行えるようになった。セキュリティー面では、誰がどのソフトウエアにアクセスしているか、ACCを通じて把握することができるという。

 ACCをはじめ、デジタル技術を導入するに当たり、このプロジェクトでは3人のBIMオペレーターを配置。現場ではiPad端末などを使用し、施工状況を確認している。建物の柱にはQRコードが貼付されており、これを端末で読み込むと、AR(拡張現実)により現在地と図面情報を重ね合わせて進捗(しんちょく)状況を可視化。アップデートしたい事柄を入力すると、BIMモデルやACCが更新される。

DPRコンストラクションメンバーとACCユーザー会らの集合写真


 プレハブの壁にはそれぞれQRコードを付け、製造段階から出荷までトラッキング可能だ。BIMモデルにひも付いているため、設置箇所や設置状況が容易に把握できる。

 また、現場内の随所に置かれた「BIMステーション」では、スクリーン上で図面情報を確認。紙図面はほとんど使っていないという。墨出しロボットなども活用し、建設プロセスのデジタル化を徹底的に推進している。

 現場を見学した竹中工務店の滝本秀明東京本店プロダクト部BIMグループ長は「技術的には日本でも取り入れられているものだが、デジタル化を徹底的に実践している姿勢が素晴らしかった。その時々の最新の技術をためらわず導入する意識の高さが、デジタル化を根付かせているのだと感じた」と述べる。日本でデジタル化を加速させるためには、「データをいかに有効活用しているかという評価軸が必要ではないか」と説く。

 大和ハウス工業の宮内尊彰東京本社技術統括本部建設DX推進部次長は、日本と欧米の建設工事請負契約形態の違いが、欧米でBIMをはじめとしたデジタル化を加速させた要因だと分析。欧米では施主が総合建設業者と契約して工事を進めるのではなく、コンストラクションマネジメント会社と契約した上で、個別の施工会社と別個に契約する方式が一般的で、ネットワーク工程を作成しづらく、工程が長期化し、遅延問題が発生するケースが多いという。

 そこで、現場で起きている問題を早期に発見し、工事遅延などを防止するため、BIMが発明・導入されたとし、デジタル活用が進んでいる背景を解説する。

 日本で今後、ホールライフカーボンの観点から建材のトレーサビリティーを確立する流れが根付き始めると、「今回の現場が建材一つひとつの情報をデジタル技術で管理していたのと同じような方式が定着するのではないか」と先を読む。



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