【記者座談会】補正予算案が閣議決定/難航する大規模事業 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【記者座談会】補正予算案が閣議決定/難航する大規模事業

◇公共事業2.4兆、国土強靱化には1.4兆

A 石破政権で初の総合経済対策の裏付けとなる2024年度補正予算案が11月29日の持ち回り閣議で決定した。

B 日本経済・地方経済の成長、物価高の克服、国民の安心・安全の確保の3本柱で、一般会計の歳出総額は13兆9433億円と前年度を上回る大型補正となった。財源の半分近くを新規国債発行で賄い、うち建設国債の発行は3兆0800億円だ。補正予算案は9日に国会に提出し、審議入りする。

C 建設産業界が注目していた公共事業関係費は総額で2兆4000億円となった。このうち防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策最終年の公共事業関係費は1兆4063億円を計上した。前年度補正予算と比べ、総額で約2000億円増、国土強靱化で約1000億円増だ。

A 5か年加速化対策には前年度補正予算と同様、緊急対応枠で3000億円を加えたほか、緊急防災枠として2500億円も計上した。

B 緊急対応枠について、国土交通省は「物価高騰などを踏まえて強靱化を進めるために緊急に必要な経費」と説明する。物価高騰などで目減りする事業量を確保するものだ。緊急防災枠は「能登半島地震などの教訓を踏まえ、緊急に対処すべき経費に活用するもの」として新設した。上下水道施設や住宅・建築物の耐震化、道路法面・盛り土対策など、能登半島地震をはじめとした災害で課題が顕在化したハード面を強化する。

C このほか、GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債を活用するGX推進対策費は経済産業省に5334億円、環境省に2377億円の計7711億円を計上した。建設産業界に関係する事業も複数含まれており、ビジネス機会があると言える。

◇想定超える増額、担い手不足の影響ずしり

工事入札が中止となった船橋市の医療センター(完成イメージ)


A ところで、順天堂大学が埼玉県と浦和美園地区(さいたま市)に検討していた800床を備える病院「(仮称)国際先進医療センター」の整備計画を断念したね。最近、大規模事業の入札不調や計画見直しが目立っている。原因はなんだろう。

D 順天堂大によると、建築業界の急激な需要増や資材の高騰に加え、人手不足などを要因に、概算工事費が2186億円に達することが判明したという。これは埼玉県が2015年に整備計画を承認した当初の予想総事業費の約2.6倍に当たる。ほかにも、野村不動産などが施行予定者として中野サンプラザの跡地で計画している「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発事業」では、2600億円と想定していた事業費のうち、工事想定額が900億円程度上昇する見込みであることが判明し、施行認可申請を取り下げている。

E 計画段階と比べて、想定以上に建築費が高騰していることがよく分かる。事業費増大を受けて、計画を延期や中断したとしても、今後さらに建築費が膨れ上がる可能性もあり、自治体などは対応に苦慮している。

D 建築費の高騰よりも深刻なのが設備工事での人手不足だ。千葉県船橋市が工事入札を中止した市立医療センターの建て替えで、ゼネコンなどにヒアリングを実施した結果、設備工事会社の確保が難しいことや手持ち工事で手一杯との意見が挙がっていた。ある地方では、一定規模以上の工事は競争が発生しないほど、設備工事の人手不足に悩まされているとも聞いている。

E 担い手不足の影響がここに来てズッシリとのしかかってきた感がある。建設産業界も目の前の経営問題として終わらせることなく、中長期的な視点から解決策を見いだしていくことが求められる。

 

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