【多様に広がる建設ICT活用③】SAWAMURA 現場の支援組織拡充に舵切り/Archicad定着で提案力に強み | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【多様に広がる建設ICT活用③】SAWAMURA 現場の支援組織拡充に舵切り/Archicad定着で提案力に強み

 滋賀県高島市に本社を置く総合建設会社のSAWAMURAが、BIM活用のステージを着実に引き上げている。設計段階のBIMは定着し、次のステップとして施工段階への活用に踏み込む。澤村幸一郎社長は「設計段階は見せるためのBIMを推し進めてきた。施工段階ではデータを実用的に活用するためのBIMに力を注ぐ」と語り、現場を支援する組織の拡充に乗り出すことを明かす。

左から和田山氏、藤森氏、澤村氏、徳永氏、木曽氏、村中氏


 非住宅分野を担う設計部門では、実務者8人中7人がグラフィソフトのBIMソフト『Archicad』を使いこなす。ソリューショングループ設計課BIMマネージャーの徳永康治主任は「日常ツールとしてArchicadが定着したことで、提案時のプレゼンテーション力が強みになっている」と説明する。

 最近の民間プロジェクトでは大手住宅メーカーとも競い合うケースが増えている。澤村社長は「付加価値を求める施主には視覚的にプランを表現できるBIMの有効性を強く感じている。持ち前のコスト競争力に、BIMによるプレゼンテーション力が加わり、より総合力が発揮できている」と手応えを口にする。

 日常ツールとして定着するArchicadについて、設計課の村中裕生氏は「直感的な操作性に加え、いくつかのパターンでプランを比較管理しやすい点も有効」と説明する。設計提案では村中氏が中心となり、Archicadとビジュアライゼーションソフトを連携して、プロジェクトをリアルに体験できるプレゼンテーションを積極的に取り入れている。

 滋賀県内に本社を置く製造開発メーカーのオフィスプロジェクトもBIMを最大限に活用した事例の1つだ。3層吹き抜け空間をもつ3階建て延べ1800㎡の1期工事が完了し、現在は2期工事に着手している。設計担当の徳永氏は「BIMを使って施主と密な打ち合わせを進めてきた」と説明する。

BIMを最大限に活用した製造開発メーカーオフィス


 このように企画提案から設計までのBIM活用が定着している同社では、次のステップとして施工段階への展開を準備している。設計課の木曽篤チーフマネージャーは「施工への展開では効果が出やすい部分から着実に浸透させていく流れになる」と強調する。現在の施工部門では25人中18人がArchicadの基本操作を習得し、このうちArchicadを使いこなす3人が中心となり、現場導入を推し進めている。

 設計から施工へのフルBIM活用は3件ほどあるものの、まずは土量計算や見積もり算出などの部分的な活用に力を注いでいる。徳永氏は「現場所長全員がBIMを活用するのではなく、現場のBIM活用を支援する体制を拡充することで、現場の総合力を発揮していく」と説明する。

松井建設との勉強会風景

 こうした考え方は、現場へのBIM活用を積極展開する松井建設の現場が参考の1つになっている。澤村社長を含む20人で現場を訪問し、施工段階の活用方法に刺激を受けた。それをきっかけに現場向けテンプレートの整備にも乗り出した。現時点で基礎と仮設計画の2つを整備し、今後は躯体や内装にも着手する。

 施工段階の活用を支援する組織として、工事サポート課の存在にも期待が集まる。役割の1つとして現場へのBIM導入支援を位置付けた。工事サポート課の藤森博紀課長代理は「テンプレート活用の勉強会を行うなど、現場へのBIM活用を後押しすることがわれわれの役目」と話す。行政関連の申請書類にもBIMデータを活用した3次元パースなどを付与することで「円滑に許可を得やすくなる効果も実感している」という。

 26年春からはBIMデータから出力した図書を建築確認申請に使うBIM図面審査がスタートする。徳永氏は「BIM申請に向けたテンプレート整備も進めている」ことを明かす。社内イントラネットにBIM掲示板も発足し、各部門の成果を集約し、社内への水平展開もスタートした。

 澤村社長は設計から施工への活用を推し進める中で「工事サポート課が下支え役として機能しているように、BIMの取り組みを社内で分業化することで、より効果的な展開へと結びつけたい」と考えている。BIM活用の階段を一歩ずつ登る上で「皆が理解して先に進むことが何よりも重要であり、これからもBIMを成長戦略に位置付け、当社ならではのBIM活用を確立していく」と語る。



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