【BIM未来図 地域建設業のいま(中)】SAWAMURA 独自LOD表現で理解度増す | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【BIM未来図 地域建設業のいま(中)】SAWAMURA 独自LOD表現で理解度増す

 SAWAMURA(滋賀県高島市)では、BIMの導入を効果的に進めるため、2020年10月に独自のLOD(モデル詳細度)指標を整備した。BIM導入のけん引役となるソリューショングループ設計課は体制が拡充され、現在は新入社員1人を含む計5人がBIMソフト『Archicad』を使いこなす。モデリングの精度を確保する手段としてLODの整備は欠かせないが、これまでは簡単な一覧表を使っていた。設計課の徳永康治氏は「身近な実プロジェクトをベースにした独自のLOD表現を試みることで分かりやすく、社内の理解度も増している」と説明する。

設計課では5人が『Archicad』を使いこなす


 同社のLOD指標は、自社の大津営業所をモチーフとし、モデル詳細度に応じ、出力図面がどの程度の精度になるのかを一目で確認できる。図面表現や作業上のルールなど社内の設計マニュアルもLODの中に格納し、誰もが使いやすいように工夫した。現時点でLOD100と同200の整備を終え、これから同300と同400の整備にも着手する。

 社内では、施工段階への導入が動き出し、加えて積算への設計データ活用も模索している。LODの統一化は今後のBIMデータ活用の生命線にもなってくる。実績の中には改修プロジェクトへのBIM導入事例もあり、延べ3200㎡の工場改修では電気、ガス、給排水など600を超える機械類の新たな配置計画立案にBIMを効果的に活用した。設計課主任の木曽篤氏は「BIMで設計する際、モデルをつくり込んでしまうことが多く、統一する手段としてLODの見える化が有効と判断した。設計マニュアルと組み合わせることで、より使い勝手が向上している」と強調する。

 施工段階へのBIM導入は、20年10月に着工したS造平屋建て981㎡の物流倉庫新築工事を初弾プロジェクトに位置付けた。物流系倉庫は形状もシンプルでBIMの導入もしやすい。受注量も多く、いずれ意匠的にも複雑な案件を受注した際にもBIMが有効になると導入を先行した。

 ただ、初めての試みであったため、あえて敷地の基準レベルを選定する手段にとどめた。施工導入2件目となったS造平屋建て1309㎡の倉庫新築工事も同様に、設計GL算出の検討にBIMを活用した。いずれも現場での作業ロスを減らすため、設計課が現状敷地のモデルを作成し、それを使って現場は最適な土量を算出でき、一定の成果を得た。

独自表現のLOD


◆初のフルBIMにチャレンジ
 「いよいよ設計から施工へのフルBIMにチャレンジしていく。これを機に付加価値のある仕事に結び付けていきたい」と、澤村幸一郎社長は大きな期待を持っている。設計コンペで受注を決めた外資系企業の自動車展示場は、デザインの与条件が細かく定められ、基本設計、実施設計、施工の各段階で施主への承認が必要であることから、一貫してBIMを取り入れることを決めた。

 同プロジェクトの設計担当を務める徳永氏は「実施設計が間もなく完了し、近く着手する施工図もBIMで進める。本格的な施工BIM自体も初めての経験になるだけに、BIMコンサルの支援を受けながら挑戦していく」と力を込める。



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