【BIM未来図 地域建設業のいま(下)】SAWAMURA BIMはブランディング戦略! | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【BIM未来図 地域建設業のいま(下)】SAWAMURA BIMはブランディング戦略!

(左から)和田山氏、木曽氏、澤村社長、徳永氏、村中氏




 SAWAMURA(滋賀県高島市)の澤村幸一郎社長にとって、設計から施工へのフルBIMに挑戦する外資系自動車展示場新築工事は「BIM導入から2年の成果であり、次のステージに踏み出す集大成のプロジェクトになる」と考えている。

 地元建設会社やゼネコンら計5社で競った設計コンペの段階からBIMをフル活用し、見事に受注を決めた。プレゼン動画を担当した新入社員の村中裕生氏は学生時代にグラフィソフトが提供する無償のArchicad教育版を使って卒業制作を仕上げており「その時に独学で習得したBIMの成果を今回のコンペに生かすことができた」と喜びを隠せない。「こうした一人ひとりの成功体験の積み重ねが会社を育てていく」と、澤村社長は手応えを感じている。

 同社は10月からBIM導入3年目に突入する。BIM推進をけん引する設計課の徳永康治氏は「BIM導入による作業効率化で生まれた時間的な余裕を付加価値づくりにつなげていきたい」と前を向く。主任の木曽篤氏も「クリエイティブな部分をさらに充実させるだけでなく、設計段階への施工検証にもステップアップしたい」と、愛用するBIMソフト『Archicad』を軸に生産性向上を図る方針だ。進行中の3ヵ年BIM計画は順調に進み、これからは施工段階での活用フェーズに入るだけに「今回のフルBIMへの挑戦は大きな自信になる」と両氏は口をそろえる。

◆顧客の納得と共感を
 5年後に現在の倍となる売上高80億円を経営目標に設定する同社は、顧客に付加価値を提供する手段としてBIMを位置付け、成長路線を歩もうとしている。建物づくりを通し、顧客企業の成長を後押しする提案活動を進める中で、ブランド推進室の和田山翔一氏は「顧客に共感、納得される仕事をすることが事業の根幹にあり、BIMはブランディング戦略にも位置づけられる」と説明する。ある地元企業から受注した支店兼工場新築プロジェクトでは設計BIMの成果をみて「本社施設にしたいほどの素晴らしさ」と評価されたように、BIMが顧客と結びつきを深める付加価値につながり始めている。

 受注の4割を占める住宅分野ではインテリアコーディネートの部署があり、顧客の要求を住まいに反映する橋渡しの役割を担っている。地元・高島市では同社の住宅メーカーとしての認知度もトップクラスを誇る。重要視しているのは川上部門の提案力強化だ。同社はBIMとの相乗効果を期待し、非住宅分野でも働く場の要望を形にするコーディネートのチームを置く。

 同社が1998年に事業化したシステム建築『CANARIS』は顧客の要望を形にするブランディング商品として、倉庫や店舗を中心に実績を積み上げ、現在は柱の事業として成長した。澤村社長は「BIMとブランディングとの相乗効果は今後大いに期待できる。BIMと組み合わせた新たなブランド商品も生み出していきたい」と、次なる展開を準備している。同社はBIMを足掛かりに成長の階段を上り始めた。


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