【BIM2022 設計BIMの地域展開】日本都市設計 新社屋で設計から施工の連携検証 | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【BIM2022 設計BIMの地域展開】日本都市設計 新社屋で設計から施工の連携検証

 BIMを導入して9年目に入った日本都市設計(札幌市)の武部幸紀社長は「次のステージに向かって動き出した」と強調する。近く着工する自社の新社屋プロジェクトではフルBIMに挑み、設計から施工者へのBIMデータ連携の検証に乗り出すとともに、北海道初のBIMを含めたデジタル活用プロジェクトにも参画が決まり、力強い一歩を踏み出した。

プロジェクトではフルBIMに挑む


 BIMの導入に踏み切ったのは2014年のことだ。受注の約7割を占める公共建築案件を手がける中で、業務上の手戻りが多く、その原因であった図面不整合を改善したいとBIMに着目した。複数のBIMソフトの中から直感的にモデリングできるグラフィソフトの『Archicad』を選定した。
 武部社長は2次元CADの使用禁止を呼び掛け、BIM導入への階段を駆け上がろうと考えていたが、導入から6,7年経っても「完全移行できるか不安が拭えなかった」と振り返る。積極的にBIMと向き合う社員は少しずつ増えていたが、2次元に戻ってしまう社員もあり、組織の中でばらつきが生じていた。

◆チームワーク機能が状況打開
 その状況を一変させたのは、Archicadのチームワーク機能だった。ネットワークを介して設計チームのメンバーが1つのプロジェクトに同時に参加できる『BIMcloud』を活用することで、所員全員が情報を集約できるプラットフォームとしての使い方も実現し「組織として一枚岩になれた」と力を込める。コロナ禍でリモートワークが増えた環境の変化にも順応できた。
 社内では、BIMの標準化に向けたテンプレートの構築も進めてきた。BIM推進の中心的な役割を担う企画設計部の宇野洋平主任は「私自身がそうであったように、社員一人ひとりが課題を持ってBIMによる設計の進め方に少しずつ慣れていった」と説明する。本格的にBIMに取り組みたいと1年前に中途入社した企画設計部の瀬尾央主任もその1人だ。社内で円滑に進むBIM設計の進め方を目の当たりにして「早く追いつきたい」と真正面からBIMと向き合っている。
 年間40件ほどの設計を手がける同社では常時15、6件の業務が同時並行で動いている。その中でも今後を見据えたBIMのトライアルプロジェクトとして位置付けるのが、本社屋の建て替えだ。規模はS造3階建て延べ約1000㎡。既に設計を完了し、近く本格着工する。武部社長は「われわれの設計BIMデータを施工者や協力会社に引き継ぎ、施工段階でもBIMをフル活用してもらい、設計から施工へのBIMデータ連携の有効性を検証する」と明かす。

 国内では設計段階や施工段階それぞれでBIMの導入が広がっているものの、設計者が作成したBIMデータを、次工程の施工者が引き継ぎ活用するケースはほとんどない。「設計から施工へとBIMデータがシームレスにつながれば、プロジェクト関係者間でBIMの恩恵を最大限に享受できる。その実現可能性を検証したい」と先を見据えている。
 施工者の選定も、施工段階のBIMデータ活用を条件に設定し、特命で岩田地崎建設に決め、各工種の専門工事会社にもBIM活用を条件付けた。新社屋の設計を担当する宇野氏は「プロジェクト関係者がBIMcloud上で情報共有しながら、施工段階で求められるLOD(モデル詳細度)のあり方を探り、今後われわれの設計にも生かしていきたい」と考えている。
 同社はプロポーザルで特定された北海道発注の道営集合住宅設計業務でもBIM活用の検証を担う。道初となるBIMを含めたデジタル活用の試行業務となる。設計担当の瀬尾氏は「基本設計では建物配置の検討にBIMを活用し、手ごたえを得た。これからの実施設計でもBIMの有効性を示したい」と意気込む。発注者はArchicadビューアソフト『BIMx』を使って3次元で成果を確認するなど、情報共有の新たな枠組みも検証する。

北海道初のデジタル活用業務も受託


 同社のArchicad契約数は設計者全員分の25ライセンスに達する。武部社長は「社内でストレスなくBIMに取り組めるようになるまでに時間がかかったが、BIM導入から9年目に入り、ようやく本格的なBIM導入のスタートラインに立てた」と実感している。

左から宇野氏、武部氏、瀬尾氏



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