【海洋土木】ケーソンの誘導から据付までを無人化 「自動化」につながる東洋建設の新システム | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

公式ブログ

【海洋土木】ケーソンの誘導から据付までを無人化 「自動化」につながる東洋建設の新システム

初適用した細島 防波堤築造工事

 東洋建設が、ケーソン(函体)の誘導から据付までを無人化する新システムを現場に初適用した。波を相手にしながら、見えない海中で施工する海上土木工事では以前から施工支援の役割としてICTが活用されてきた。無人化施工はICT活用の到達点でもある「自動化」につながる道筋。土木事業本部土木技術部の和田眞郷部長は「一つひとつの技術を熟成させ、それを組み合わせながら自動化への道を歩むことが近道」と強調する。 社内にICT推進部会を立ち上げたのは、ことし4月のことだ。国土交通省が直轄の浚渫工事に2017年度からICT活用工事をスタートさせたのを機に、各部門から7人を選抜した。部会長も務める和田部長は「いずれはICT活用の対象がブロックやケーソン据付などに広がる可能性がある。組織横断で多様な要求に対応していく」と力を込める。
 既に浚渫工事では4現場でICT活用に取り組んでいる。7月には北陸地方整備局がICT活用工事として発注した金沢港の大野地区航路浚渫工事も落札した。活用工事では海底地形を面的にとらえるナローマルチビーム測量の使用が前提になる。これまでも技術提案として積極的に盛り込み、実績を増やしてきた。今後の活用機会の増加を見越し、保有台数を増やす方向で検討を始めた。
 ことし春には、グラブ浚渫の施工管理システムも確立した。海底をナローマルチビームで計測し、クレーンの向きや角度、バケット開閉の情報と地盤深浅情報を組み合わせて表示、施工状況を把握するとともに、作業手順や場所、深度などの機械制御をガイダンスするもので、既に2現場で採用中。和田部長は「掘り残しの手戻りを減らす目的で開発したが、何よりも自動化につながる 施工支援のプラットフォームとして確立できたことは大きい」と手応えを口にする。
 ICTの活用は、省力化や無人化による安全作業の確保に加え、施工時の正確な状態把握、さらには熟練工の不足を考慮した機械操作の自動化についても目指すべき到達点として位置付けている。土木事業本部技術営業部の横山浩司部長は「海中をリアルタイムに見える化し、いかに施工精度を上げるか。さまざまな切り口の技術が有効になり、要求も多様化していく。それぞれの作業に見合うように引き出しをたくさん用意する必要がある」と先を見据える。

誘導から据付までをモニターで確認

 細島防波堤築造工事(宮崎県日向市)に初適用したケーソン据付の無人化システムは、順を追って段階的に技術開発を進めてきた。まずはケーソン位置を把握する誘導システムを整え、その後にケーソンの姿勢制御を確立し、これらシステムを合わせることで無人化にこぎ着けた。「だが、すべての工事にそのまま使えるわけではない」と和田部長は説明する。現場によってケーソンの形式が異なるだけでなく、工事場所によっても波の高さなどの条件が違う。誘導船の種類もあり、工事ごとにシステムの微調整が求められるからだ。
 海上土木では、波浪予測も作業安全性や生産性向上に結び付く重要な技術になる。同社はレーダー情報の解析やブイの動揺の画像解析、GPS(全地球測位システム)波高計の利用など、施工に支障があるような波浪の接近をいち早く検知するシステムの開発にも乗り出している。大深度や遠洋の作業を想定し、沖合15㎞を超える現場でも的確なナローマルチビームの可視化が実現するよう、高精度な測位を実現するPPP-AR方式GPSも技術のラインアップに加えた。
 ICT推進部会にもオブザーバー参加する横山部長は「ICT機器の技術動向を常に把握しなければならない。個別技術の開発も重要だが、技術をつなぎ、最適なシステムとして活用する流れが今後さらに問われる」と、組織横断でICT活用の方向性を導いていく長期的な技術戦略の必要性を強く訴える。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら