選考総評した斎藤公男選考委員長は、ことし改正した選考基準をもとに、応募作品だけでなく、応募者の構造家としての実績や資質についても議論することや、1つの作品で複数の応募者がいる場合、各々が果たした役割が明確・対等であり、設計と工事監理まで一貫して主体的に関与していること、海外からの応募者も受け入れることなどを確認した上で選考を進めたことを紹介した。
西沢立衛氏、赤松佳珠子氏、金田充弘氏、山田憲明氏の4人の選考委員からも「いずれも構造、設備、意匠が美しく統合された作品。チームでやることが大きな建築創造の個性になることも感じた」(西沢氏)、「バラエティーに富んだ創意工夫にあふれる作品が多く、構造にはまだまだ工夫の余地があることを感じた」(金田氏)などと受賞作品に対する評価が寄せられた。
講演ではそれぞれ受賞した作品の特徴や構造設計のポイント、また構造家としての取り組みなどを紹介。特に構造架構を「美しく見せる」ためにディテールにとことんこだわり突き詰めていく姿勢や、メーカーと設計事務所の枠を超えたコラボレーションの可能性などが示された。
腰原氏は木造建築の今後の方向性について「これまでの線材からこれからは面材となる」と指摘する一方、「大断面集成材やCLT(直交集成板)が高いのはオープンシステムになっていないから。まずベースとなる寸法を決めること、接合部を標準化することが普及のかぎとなる」との考えを示した。
さらに「構造家だけでは広がらない。建築家の中でデザインだけでなく構法を考える人がもっといてほしい」と呼び掛け、「木造だけでは限界がある。都市につくるのなら混構造。いま木造には追い風が吹いているが、木だけでなく、繊維コンクリートや鋳鉄、土、竹なども、もっとうまい使い方があるのではないか」などと語った。