【「BuildApp」内装向けリリース】野原グループ「建材数量・手配」内装BIM最初の一歩に | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【「BuildApp」内装向けリリース】野原グループ「建材数量・手配」内装BIM最初の一歩に

平野氏


 野原グループは、BIM設計-製造-施工支援プラットフォームBuildApp(ビルドアップ)シリーズの初弾となる『BuildApp内装』を3日にリリースした。内装工事の「建材数量・手配」にフォーカスし、BIMを活用して石膏ボードや軽量鉄骨材(LGS)など各種建材の数量算出、施工計画作成、プレカット納品などに必要な情報を提供する。工事終盤の逼迫した工期で作業する内装工事の生産性向上に貢献するため、今後も機能を拡張していく。BuildAppサービス開発統括部BA1部の平野洋行部長に、サービスのポイントと今後の事業展開について聞いた。

–内装工事をBIM化する意義を教えてください

 日本のBIMは2009年を“元年”に本格化し、躯体や設備を中心に活用が進みましたが、「内装」ではほとんど使われてきませんでした。今回のサービスはBuildAppシリーズの最初の一歩ですが、建築生産プロセスの中で内装領域のBIM活用に踏み込む重要な一歩になると思います。

 ゼネコンは鉄骨ファブリケーターや設備サブコンなどとBIMを通じて生産データを連携し、施工プロセス全体の生産性向上を目指しています。中小企業が主体の内装工事は長らくBIMを作成するのが難しい状況でしたが、BuildAppをハブにすることで最終工程の内装工事にBIMを導入し、生産性向上につなげます。

 今回は内装工事の中でも準備段階に当たる「建材数量・手配」をリリースしましたが、BuildAppの全体構想の一部であり、今後も内装設計から施工の出来高管理まで連続的にサービスを提供する方針です。その後も「建具」など他工種に対象を拡大していきます。

–BuildApp内装の概要は

「建材数量・手配」のしくみ


 ゼネコンが作成した施工図用BIMをBuildAppに取り込み、内装工事に必要なデータを抽出して活用します。アウトプットするデータは、現場で活用する2次元図面や数量表などに変換して提供します。内装工事店がBIMソフトを用意する必要はなく、実際に現場で働く職人さんもBIMを使っているのかわからないくらいの感覚で生産性向上を実現できます。そこを重視して開発したのが大きなポイントです。

 また、ゼネコンは多くの鉄骨ファブリケーターや設備サブコンと生産連携し、BIMデータを製造工程まで一気通貫で活用して鉄骨や配管を製作する際のリードタイムを大幅に短縮しています。それと同じことを内装工事でも行い、石膏ボードやLGSなど建材数量の算出や揚重間配りの計画、プレカットにBIMデータを活用します。

 これまでは企業が単体で生産性向上によるコスト軽減に取り組んできましたが、それも限界に近づき、今後は企業間のサプライチェーンにおけるデータ連携にコスト削減の余地が残されていると考えます。私は製造業の出身のため、特に自動車産業で顕著なのですが、系列会社のシステムが強固に連携し、生産性を向上させているのを見てきました。裾野の広い建設業が同じことをするのは難しいですが、BuildAppをハブにゆるやかにデータ連携することで、さらなる生産性向上が実現できると思います。

 「建材数量・手配」は、初期リリース版のため、お客さまに代わって当社がシステムを操作し、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の形式でアウトプットを提出します。正式なウェブ版を7月以降にリリースし、ユーザーが直接データの操作を行うようにします。

  –具体的な活用法は

 「建材数量・手配」の対象は、建材数量の手拾い、割り付け検討や揚重・間配り計画など内装工事店の番頭さんや職長さんの業務の3分の1を占める“段取り”の部分です。それらをまるごと任せていただきます。元請けが作成したBIMから各工区に必要な建材の数量や重量を算出し、職長さんに提供して現場の工程調整や計画作成に活用してもらいます。壁の材料構成などもアウトプットでき、職人さんへの適切な指示出しにつながります。

 例えば番頭さんが延べ3万㎡の複合ビルを手掛けるとき、数量計算などの準備作業に25日程度を割いています。BuildApp建材数量・手配を活用してもらえれば、それらの準備作業を全て当社に任せていただき、25日分の空き時間を確保できます。また、ゼネコンや内装工事店と進めてきた実証作業では、BIMデータから建材の数量を高精度に提供することで、現場を材料不足で止めないように考慮したうえで、廃材をベテラン番頭さんと同じレベルの10%以内に抑えることができました。

 BIMを活用する前は、内装工事店は低層フロアに資材をまとめて置いておき、工事が終わったら余った資材を上のフロアに揚げて施工するため、資材管理が大雑把となり、多くの廃材を出していました。例えばBuildAppの揚重・間配り計画表を活用することで、最初から各フロアに必要な建材の配置や量がわかり、作業所内のロジスティクスがスムーズになります。そうした計画検討を自動化することで、番頭さんや職長さんは施工手順や納まりが難しい場所の検討、設計変更に伴う増減精算など、本来時間をかけるべき業務に集中することができます。

 また、石膏ボードやLGSのプレカットに関しては、この2年間、ゼネコンや内装工事店の協力を得て約20現場で実証を進めました。BIMから算出した数量や形状に基づき、プレカットした部材を納品し、現場の省力化を図ります。実証では、現場が逼迫して多工種の同時施工が始まるとプレカット部材の置き場がなくなったり、仮設開口が設置されたり、雨が吹き込んで施工の順序が変わりダメ残りで割付が変更するなど、プレカット部材を計画どおりに使えない事態も発生しました。そうしたノウハウも蓄積し、プレカット部材の有効な活用法を提案します。

  –サービス活用の手順は

サービスの活用による業務フローの変化

 着工から半年以上前に当社に声を掛けていただき、BIMモデルの準備やゼネコンとの打ち合わせに当社も参加し、内装工事段階におけるBIM活用の方針を固めます。内装工事に着手する数カ月前から、当社が工区ごとに使用する建材の数量や揚重・間配り計画表などを作成準備し、工事が始まる数週間前には主として工事店と方針会議を開き、どの工区にどれだけ建材を納品するか検討します。

 ゼネコンに準備してほしいBIMモデルの基準を示すため、LOI(属性情報詳細度)やLOD(モデル詳細度)を示した当社のBIMモデル定義書も策定しました。業界全体でBIMを作成する人材が不足するため、当社はグループ会社のBA-plusを設立し、BIM人材を提供することで施工図のBIM化を支援しています。ゼネコンの生産設計出身の社員も在籍しているため、ゼネコン側のBIM担当者と同じ目線で打ち合わせすることも可能です。

 また、当社は約660社の内装工事店と建材メーカーを会員に、全国8地区で展開する「野原装栄会」を組織しています。内装工事業で工事店とBIM活用に向けた実証作業を重ねているほか、野原装栄会のネットワークを通じてBuildAppの情報も提供しています。

  –ゼネコンや施主のメリットは

 ゼネコンの現場所長はよく、サブコンや職人が儲かるような段取りをしようと職員に話します。なぜかというと、良い段取りができれば職人の作業が楽になり、歩掛りが向上し、職人が儲かる。そうすることで現場の評判が高くなり、人を集めやすくなるからです。結果的に作業所全体の生産性が向上し、工事の利益率が高まる良い循環が生まれます。そこにBIMを使うことで、さらに効率化していきたいと思います。

 今回リリースした建材数量・手配は内装工事店向けの機能が中心ですが、サブコンの仕事の効率化が現場の効率化に貢献するため、それを体現することでゼネコンにとってもメリットになると思います。

 一方、施主がBIMを使う価値がどこにあるかというと、まずは技能労働者不足や物価上昇などの変動リスクの環境変化が大きくなり、日本の建設業が提供してきたランプサム(総価請負契約)がだんだん難しくなってきているという認識が必要です。人手不足から売り手市場となり、コストプラスフィー(実費精算契約)などさまざまな検討が広がりつつある中、そのような契約形態の場合では、設計変更した分が請求されるため、施主側がしっかりコストマネジメントする必要があります。そのとき、BIMが効果的な手法になります。

 BIM活用をさらに一歩進め、設計、ゼネコン、サブコンが連携してフロントローディングを実現すれば設計変更が減り、施主のメリットになります。施主を含めたBIM活用が広がることで建築生産プロセスの変革が加速し、建設業界の持続的な発展につながります。

  –今後の展開は

 BuildAppシリーズは、今後もさまざまなサービスを展開していきます。現時点ではあと三つのサービスを並行して開発中で、第2弾は7月頃を予定しています。あらためてお披露目する機会を設けて説明させていただきます。

 ゼネコンや内装工事店との実証を通じて生産性向上の手応えを得ています。今後もユーザーの意見を反映させながら、カスタマーサクセスの実現を目指してサービスを磨き、建設業界の発展に貢献したいと思います。

 

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