近畿地方整備局六甲砂防事務所は、ドローンのレベル3.5飛行による砂防施設点検に全国で初めて挑戦している。20日、神戸市の青山堰堤広場で点検の実証実験を行った。レベル3.5飛行により、一般道路を立ち入り管理措置せずに横断できることとなるため、砂防施設点検の大幅な効率化と安全性の向上が期待される。
実験では、DJI社製のドローン「MATRICE 300 RTK」を使用した。性能面では、風速毎秒15m以下の条件で、1回当たり30分飛行可能だ。今回の飛行では、高さ140mまで上昇した後、長さ4.8㎞の行程で8基の堰堤を17分かけて点検した。計4回飛行し、動画撮影、オルソ画像撮影、レーザー計測、定点撮影を実施した。実験は業務を請け負っている中電技術コンサルタントが担当した。
動画撮影では、リアルタイムの変状を確認でき、定点撮影では、経年での変状確認を想定している。オルソ画像撮影では、一定間隔で撮影した写真を組み合わせることで、正確に広域の地形を再現できる。レーザーで計測した点群と組み合わせ、より正確な座標データも出力可能だ。
ドローンの自律飛行にはレベル1から4までの段階がある。このうち、レベル3は無人地帯での目視外飛行が可能だ。しかし、無人地帯でも第三者が立ち入る可能性がある場合、補助者の配置や看板設置などの立ち入り管理措置が必要となる。
2023年12月に新設されたレベル3.5飛行では、カメラを備えたドローンと無人航空機操縦者技能証明、保険の加入などの条件を満たせば、立ち入り管理措置が不要となる。このため、一般道路や鉄道などの路線を横断できるようになる。道路が横断可能となることにより、近隣に点在している砂防施設をまとめて点検できるのが大きなメリットだ。
同事務所管内には560基以上の砂防施設があり、これまで徒歩で点検に向かっていた。険しい地形などの現場条件によっては1日に2、3基しか点検できないこともある。今回のレベル3.5飛行では、8基の堰堤を点検する4回の飛行にかかった時間は1時間30分。撮影後の解析も1時間程度で完了する。最初の飛行で関係機関への申請や飛行ルート、点検手法などのルールを決めてしまえば、以降は簡単に同じ点検を繰り返すことができる。
同事務所は24年度に2流域でレベル3.5飛行を実施している。白髭一磨副所長は「今後、管内の全流域で実施し、人力での点検からドローンでの点検に置き換えたい」と語った。