◇重層下請構造など長年の課題解決に期待
A 先月26日、国土交通省が「今後の建設業政策のあり方に関する勉強会」をスタートさせた。
B 昨年、第3次担い手3法の成立に尽力し、7月1日付で復興庁統括官に就いた平田研前不動産・建設経済局長の置き土産になった形だ。持続可能な建設業を前進させる思いも託したのかもしれない。
C この勉強会は、建設産業政策会議の2017年の提言「建設産業政策2017+10」から、もうすぐ10年となることも関係している。提言を受けて「建設キャリアアップシステム」を立ち上げ、その活用が進んで「工期に関する基準」も策定されるなど、数多くの施策が具体化された。ただ、解決が難しい課題や時代の流れと共に状況の変化もあるから、今後の建設産業政策を定める検討は必要だ。
D 17年提言の冒頭が、「あなたは若い人たちに明日の建設産業をどう語りますか」という問い掛けから始まるのが印象的だった。その答えとして、やりがいのある産業、健全に経営される産業、働く人を大事にする産業、将来は今までと異なる次元の建設サービスを提供する夢や希望に満ちた産業であることが含まれている必要性を強調していた。
C その後、さらなる検討が進み、19年の新担い手3法の成立につながったわけだ。第3次担い手3法のきっかけが、22年8月設置の「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」だったように、今回の勉強会の成果も法改正につながるかもしれない。
B 個人的には勉強会メンバーの中でも、新担い手3法成立当時の土地・建設産業局長(現不動産・建設経済局長)だった青木由行氏の発言に注目したい。長年の課題である重層下請け構造などの解決に向けて、平田氏後任の楠田幹人不動産・建設経済局長の手腕にも期待している。
◇課題解決に向け“共創”する事業会社に
A 地域建設業の側にも大きな動きがあった。東北6県の地域建設企業7社とみずほ銀行が出資する合弁会社「東北アライアンス建設(TAC)」の発足だ。地域の建設企業が連携しようとする動きは今までもあったが、各社が出資して一つの会社を設立するのは珍しい。狙いは。
D 一部では大型工事の受注を狙っているという報道もあったけど、陰山正弘社長は大手ゼネコンと競争して大型工事を獲得する狙いをはっきりと否定しているよ。
E 地域建設企業が集まって1社になった方が規模のメリットを発揮できるという指摘は昔からあったが、陰山社長は合併も否定している。地域の工事をまるごと受注する狙いでないことは明らかだ。
B TACは技術者を直接雇用するし、建設業許可も取得するから当然、工事は受注する。例えば、民間建築工事で案件が多く個社の技術者が足りない時の受注、技術者が手空きの時に協力会社を融通し合って受注するケースなどが考えられる。DX(デジタルトランスフォーメーション)のための共同開発や、災害時の相互協力はイメージがしやすく、各社の課題解決のために活用できる事業会社と考えた方が良いようだね。合弁にすることで、口約束でうやむやにならず、継続性もあるだろうし。
E TACの出資者については、増える可能性もあると陰山社長が認めている。ただ、“競争”ではなく“共創”するためには、同じ地域の建設企業が入ってくると競合関係になり難しい面もあるだろう。参加者が増えるとすれば、各社とは業種や地理的関係で距離がある会社になるのではないか。
A いずれにしても、地域建設企業が連携する新しいモデルとして、これからもその動きから目が離せない。