ハイレゾ(東京都新宿区、志倉喜幸代表取締役)は地方の廃校や研究施設などを活用したデータセンター(DC)で事業拡大を狙う。2019年の石川県志賀町を皮切りに、24年12月の高松市、今年8月の佐賀県玄海町と、運営するDCを増やしている。志倉代表は「今後も積極的に増やしていく」と見通す。経済産業省が27年度までに国内で整備する方針とした60エクサフロップスの計算資源のうち、同社は15エクサフロップスのシェアを目指す。
同社はGPU(画像処理半導体)専用DC運営と、DCに設置したGPUによるクラウドサービスを手掛ける。主なユーザーは大学、研究機関、企業の研究開発部門だ。この学術研究用の場合、千葉県印西市などで建設が進む大規模なDCとは、必要とされるレイテンシー(遅延時間)やセキュリティーなどが異なることが多い。これにより都心部に近い立地や特別高圧電力などが不要となる場合もあり、地方でのDCの事業性が浮上する。「人工知能(AI)の活用が広がり、事業用はもとより学術研究用のニーズも高まっている」という事業環境も追い風だ。
「廃校などの遊休不動産をDCに改装して産業・雇用の創出や税収増加につなげたい」との地方自治体の関心も高まっている。「既存建物を改装してDCとすることは、当社視点では建設コストや工期が縮減できる利点がある。GX(グリーントランスフォーメーション)、持続可能性の面で社会的にも推進が必要」と補足する。
同社のDCに適した立地や建物の条件は「手探り」で、現状では躯体の耐震性能や、送電線の引きやすさなどの基本的な条件が合えば可能性はあるという。AI向けDCについて「GPU側の規格が少しずつ決まりつつある一方、建物は具体的にどんなものがよいかまだ固まっていない。省エネや熱処理など建築側の技術の開発・実装が影響を与える余地がある」との認識だ。