【Society5.0を世界へ】日本式スマートシティーを海外に展開 質の高いインフラ投資へ 4府省 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【Society5.0を世界へ】日本式スマートシティーを海外に展開 質の高いインフラ投資へ 4府省

 政府がスマートシティーの取り組みを加速化させている。国土交通省など4府省が実施するモデル事業の関係者をネットワーク化するとともに、海外の国や都市と協力関係の構築を始めた。世界的に都市化が進展する中、AI(人工知能)などの先端技術で都市課題を解決するスマートシティーは、日本が目指す未来社会の「Society5.0」を世界にアピールする“ショーケース”となる。日本が提唱する「質の高いインフラ投資」にもつながるため、積極的に海外展開を推し進める方針だ。

日ASEANスマートシティ・ネットワーク・ハイレベル会合にはインフラ担当省庁の幹部らが集まった

 スマートシティーは、AIやIoT(モノのインターネット)などの先端技術、官民データをまちづくりに取り入れることで、市民生活・都市活動の質向上や都市マネジメントの最適化を図り、都市が抱える課題を解決する新しい概念。米国、欧州、中国や、先端技術の導入で一足飛びの経済発展を狙う途上国を中心に社会実装が進む。国内では、国交省、内閣府、総務省、経済産業省の4府省が2019年度からモデル事業を実施している。
 国内で大きく動き出したのは4月。経済財政諮問会議で安倍晋三首相が国交省に対して、スマートシティーをまちづくりの基本とし、関係府省と連携しながら戦略的に推進するよう指示したことがきっかけだ。その後、「統合イノベーション戦略2019」など政府文書に取り組みの加速化が次々と明記された。
 安倍首相の指示を受けて4府省は、スマートシティ官民連携プラットフォームを8月に立ち上げ、企業や大学・研究機関、地方公共団体など、4府省が行うモデル事業の関係者に横串を打った。省庁横断的な支援を可能にしたほか、共通課題の解決策検討、技術のマッチング支援、スマートシティーの普及促進を行っている。
 プラットフォームで得られた知見を基に、“日本式スマートシティー”を海外展開する戦略を描く。都市部の人口割合は50年に世界全体の7割近くに達するとの予測があり、住宅需要のひっ迫や交通渋滞、浄水・汚水排水処理など都市特有の課題に対するニーズの高まりから、インフラ需要が拡大すると見込まれるためだ。
 経済成長に伴って急速な都市化が進むASEAN(東南アジア諸国連合)を当面のターゲットに据え、4府省と内閣官房、外務省、環境省は「日ASEANスマートシティ・ネットワーク官民協議会」(JASCA)を2日に設立した。スーパーゼネコンを始めとする建設業23社や海外建設協会など214団体が参画している。
 体制を整えて迎えた8-11日のアジア・スマートシティ・ウィークでは、国交省がASEANのインフラ担当省庁幹部やスマートシティーに取り組むASEANの都市の代表者らを招き、日ASEANスマートシティ・ネットワークハイレベル会合を初めて開催。学識者や地方公共団体、民間企業・団体を交え、▽水リスク軽減▽都市計画・開発▽交通(MaaS)▽スマートライフ(ヘルスケア、教育、エネルギー)▽環境▽安全・安心--の6分野で分科会を開き、ASEAN側のニーズや課題を確認した。

水リスク軽減や都市計画・開発など6つのテーマでASEANのニーズを確認した

 9日の閉会式では、スマートシティ官民連携プラットフォームの経験やノウハウ、グッド・プラクティスを情報共有するとともに、JASCAを日本側のワンストップ窓口としてASEANにおけるプロジェクト形成を推進していくなど、協力関係の構築を柱とした成果文書を採択している。
 国際的なルールづくりも進める。内閣府は9日、アジア・スマートシティ・ウィークの中で、スマートシティーに取り組む都市の国際的な連合体として、「グローバル・スマートシティ・アライアンス」を立ち上げた。カナダのトロント市やスペインのバルセロナ市など、スマートシティーの取り組みが先行する海外の都市と協力し、都市が収集したデータの利用法などに関するガイドラインを策定する予定で、日本が主導的な役割を担っていく考えだ。

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