【新産業の育成など視野】富山市がスマートシティー実現へ向けICT活用 その取り組みに迫る | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【新産業の育成など視野】富山市がスマートシティー実現へ向けICT活用 その取り組みに迫る

 富山市は、ICTを活用して都市機能やサービスを効率化・高度化するスマートシティーの実現を目指している。市内全域を網羅したセンサーネットワークを駆使し、さまざまなデータを収集・分析、活用することで、新たなサービスの提供や行政事務の効率化、IoT(モノのインターネット)による新産業の育成などを見据えている。

2019年度公募に採択された事業


◆市内100施設にアンテナを設置
 「富山市センサーネットワーク」は、各種センサーからの情報を集約するLPWA(省電力広域無線技術)ネットワークと、IoTセンサーから収集したデータを管理するプラットフォームで構成する。LPWAネットワークの整備は2018年度から着手し、市内約100の公共施設にアンテナを設置。居住人口の98.9%をカバーしている。
 市はセンサーネットワークを活用したパイロット事業として、18年度に小学生の見守り事業を実施した。児童に貸与したGPS(全地球測位システム)センサーで登下校路を調査し、交通安全ボランティアの適正配置などにつなげた。

スマートシティーの実現により市民サービスの向上や企業活動の活性化、Society5.0に向けた新たな価値の創造が期待される

◆民間事業者から実証実験を公募
 パイロット事業を経て、市はセンサーネットワークのさらなる活用に乗り出した。19年度は民間事業者がセンサーネットワークを無償で利活用できる実証実験を公募した。交通・人流、農業、遠隔監視・防災、福祉・介護、性能評価・施設管理といった多岐にわたる分野から応募があり、23件(36団体)を採択した。
 その1つとして日本工営は、橋梁の異常を検知するモニタリングシステムを検証。市中心部から約20㎞離れた山間部の橋梁にセンサーを設置し、桁端部に開きや段差などの異常が発生した場合、現地に設置した表示灯が点滅して利用者に警告するほか、センサーネットワークを経由して管理者にも通知する仕組みを構築した。市職員が日常的に巡回することが難しい橋梁の確認作業の省力化につながることを実証した。
 さらに、官民や民民のマッチングを促し、新サービスの開発や地域産業を活性化するため、3月には実証実験の成果報告会も開かれ、各取り組みの内容が伝えられた。20年度も引き続き実証実験を公募しており、市企画管理部情報統計課によると「19年度から継続して実施する実証事業が11件あるほか、新規でも数件程度の申し込みが来ている」という。年度末には成果報告会も予定している。

◆既存の情報基盤との連携も視野
 また、市は既に運用している既存プラットフォームとセンサーネットワークの連携も視野に入れている。その対象の1つが官民協働で構築した「富山市ライフライン共通プラットフォーム」だ。道路、電力、ガス、通信、交通に関するさまざまな情報が集約され、日常生活や業務の安全確保や注意喚起に関するエリア情報の発信、災害時の状況把握、情報発信などに活用されている。例えば、機能の1つである「ライフマップとやま」では、航空写真や地図上で現在工事中の個所が色付きで表示されるほか、施工者や工期などの工事情報も閲覧できることが特徴だ。
 そのほか、各種行政情報などをオープンデータとして公開している「富山市オープンデータサイト」などとも情報連携を模索しており、市民サービスの向上や企業活動の活性化、Society5.0に向けた新たな価値の創造を目指す。

富山市ライフライン共通プラットフォームでは市内の工事予定情報なども閲覧できる。センサーネットワークはこうした既存プラットフォームとの連携も視野に入れている

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