【G空間のしごと】固定観念を打ち破りたい! 若手4人がやりがいある"なくならない"測量・地図の仕事を語る | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

公式ブログ

【G空間のしごと】固定観念を打ち破りたい! 若手4人がやりがいある“なくならない”測量・地図の仕事を語る

 「G空間EXPO2017」が12日から14日にかけて、東京都江東区の日本科学未来館で開かれた。イベントの1つとして12日、パネルディスカッション「G空間をしごとにする-若手が語る夢と魅力」(主催=広報推進協議会、測量・地図作成分野)が開かれた=写真。測量・地図作成業は広い分野にわたり、さまざまな業務を担っているが、業界関係者以外の人にとっては、いまだ野外作業、男性社会であり、土木系の専門教育を受けた者が従事しているといった固定観念を持つ人は多い。このためパネルディスカッションは、実際にG空間社会の分野で働いている若手の社員が多様な仕事を行っていることを知ってもらうために開催した。
 パネルディスカッションには、森本洋一(朝日航洋)、川越みなみ(同)、地藤茜(国土地図)、宮坂正樹(パスコ)、高橋悠(日本地図センター)、土田俊行(中央工学校)の6氏が登壇した。司会は橘悠希子氏(国土地理院)が務めた。
 同協議会は、測量の役割や重要性などについて、多くの人々に理解を促し、関心を持ってもらうため、2015年に発足。国土地理院、日本測量協会、全国測量設計業協会連合会など、測量に携わる産学官の関係者が一体となって取り組みを進めている。
 測量・地図業界への就職を決めた理由として、大学で地理学を専攻し、現在は営業職に就いている地藤氏は「最初に就職したのは販売職で、いまの仕事とはまったく別だった。販売という仕事はできあがったものをお客さまに売る仕事だ」とした上で、「いまの仕事は地図という既製品ではあるが、中身は自分たちが考えながら、新しいものをつくり上げていくところに興味深く魅力を感じている。もともと学んでいた地理学の知識を生かせる仕事をしてみたかったので転職した」と仕事の魅力と転職の理由を語った。
 仕事と生活のバランスについて、固定資産税の土地評価業務に携わっている川越氏は「現状として、仕事と生活のバランスは良く取れている」としながらも「お客さまが地方公共団体ということもあり、3月の納品が多く、2、3月になると残業が増えることがある」と、年度末の納期の集中を指摘した。また、「会社を選ぶ時の条件の1つとして、女性でも長く働くことができるかどうかを考えていた」とし「会社説明会の時に説明してくれたのが、ベテランの女性技術職の方だったので、長く働き続けそうだと思い、(就職を)決めた」と志望動機を語った。
 キャリアアップのための取り組みとして、公共測量と民間向けの公共計測に携わっている宮坂氏は「技術士の資格を取得し、技術をアピールすることが重要になる」と述べたほか「測量は“個人商店”になりがちな業務だ。それを緩和するため、『ジョブ・ローテーション』といって、ある程度仕事ができるようになった時には、ほかの業務、部署に回している。そうすることで、誰もが同じクオリティーで仕事ができる」と同社の制度を紹介した。
 地図データの作成などを行っている高橋氏は「業務内容というよりは働き方という点で、職場全体の雰囲気を改善できるような提案を今後できればと考えている。その意味では、組織の経営も含めて学び直したい」と力を込めた。
 大学時代に学んでおけば良かった点を問われると、ハザードマップの作成や測量データを生かしたコンサルティング業務に携わっている森本氏は「文学部地理学科だったため、理系的な部分が得意ではなかった。数学、物理などを勉強しておくことが、測量業界に入るのであれば必要だと思う」と話した。宮坂氏は「プログラミングスキルがあれば、仕事の効率化が図ることができる。また、日本のインフラ技術は海外と比較して進んでいる部分もあるので、インフラの輸出といった業務に携わりたい人は英語の勉強をした方が良い」と述べた。
 海外での仕事について、森本氏は「働いたことはないが、日本とはスケールが全然違う。考え方、政府のシステム自体も違うので、行ってみたい思いはある」としながら「(日本の)地図・測量会社は、技術支援のような形で開発途上国に、地図のつくり方を伝えて現地の行政、技術者を支援している。機会があれば行ってみたい」と意欲を示した。
 測量業の専門教育に携わっている土田氏は、最近の傾向として「高校を卒業した学生を入社させたあと、そのまま測量専門学校に入学させて資格を取得してから、改めて会社で活躍してもらうという形を取っているところもある」と述べ、専門学校の特色を紹介した。また、社会人の再教育として「入社して5年、10年後に測量士の資格を取得するため、入学する人も多い」と語った。
 最後に測量・地図作成業界のアピールとして、「測量の仕事はなくなることはない。人のためになる仕事であり、若い人に入ってきてほしい」(土田氏)、「この業界の人は明るくて真面目だが、どこか地味なところがあり、話をしていて安心する人が多い。雰囲気が良くて働きやすい業界だ」(川越氏)、「地図は生活に密着したものであり、世の中を見つめる上で、必要な知識だ。難しいことを考えずに地図・地理の楽しさを実感してもらえる業界を目指していきたい」(高橋氏)、「情報化が進む中、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)で、位置情報が重要な技術となる。いままでの測量の概念にとらわれない新しい商品や仕事をつくっていける業界だと思っている」(宮坂氏)、「人の役に立っているという実感がやりがいになっている。一度は別の業界に足を踏み入れた人でも、戻ってくることができるので、興味がある人に入ってもらいたい」(地藤氏)、「測量して取得したデータをいかに活用するかが、今後求められてくる。さまざまな知識を持った人が必要となり、少しでも興味があれば、いろいろな人の話を聞いて、就職活動をしてほしい」(森本氏)とそれぞれの思いを語った。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら