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【記者座談会】東京都内の上期大規模建築計画動向 多摩地区は物流施設が新潮流

センコーグループホールディングスが江東区潮見に計画しているホテルの完成予想。2020年東京五輪をにらみ、ホテル計画は依然高水準


A 東京都内の2017年度上期(4-9月)の大規模建築計画の動向はどうだったかな。
B 23区内で1万㎡以上のプロジェクトは、東京都に提出された標識設置届ベースで見ると、前年同期比で件数が12件減の43件、総延べ床面積も約70%減の約106万㎡と大きく減少した。1件当たりの平均延べ床面積も約60%減の2万4730㎡で、10万㎡以上の規模は「羽田空港跡地第2ゾーン計画(仮称)」の1件にとどまった。市街地再開発事業も虎ノ門駅前、千住一丁目の2件だけだった。
A 数字だけ聞くと開発が失速した印象を受けるけど。
B いや、むしろ前年同期が新国立競技場や選手村などの20年東京五輪関連施設、大手町二丁目常盤橋地区、有明北3-1地区、豊洲2丁目駅前地区など超大型開発が目白押しだったから、その反動だろう。
C 五輪まで3年を切り、関連施設は一段落した。一方、今後も虎ノ門・麻布台地区、芝浦一丁目建替計画、八重洲地区などの大規模再開発などが控えている。失速ではないといえる。
A 用途別で見た傾向は。
B 全体の件数が減少し、店舗、共同住宅、事務所などに分散する中、ホテルは相変わらず高水準を維持しているのが特徴的だ。ホテルの建築計画10件はすべて、五輪前に完成する。事業者は、インバウンド(訪日外国人客)需要に対応したホテル数が東京にはまだ足りないと見ているのだろう。
A 区ごとの傾向はどうかな。
C 港区が10件と突出し、中央、千代田を加えた都心3区が全体の3分の1を占め、依然として都心集中の傾向が強い。ただトップの港区に新宿、江東、中央、大田、豊島の各区が続き、全体としてはややばらけた印象を受ける。
A 次は、多摩地区に目を向けてみよう。
D 多摩地区では、延べ床面積5000㎡以上を調査対象にしているけど、相変わらず共同住宅が突出していた。全体で28件のうち、12件が共同住宅だった。
E 三鷹市で、総延べ約6万㎡のマンションを建設する下連雀五丁目計画に代表されるように、工場跡地など広い敷地を生かした中・低層住宅開発が目立つ。建築主のディベロッパーは野村不動産が3件、住友不動産が2件。多摩地区では、両社が強いね。
A 市別では、多摩市が5件でトップだったけど。
D 上期で最大規模となる延べ9万㎡の多摩センタービルなど、5件中3件が多摩ニュータウン内の開発だった。ここ数年の特徴的な開発動向だ。都市再生機構が多摩ニュータウン内の土地売却を推進し、民間企業の取得が加速している。対象地は、広くて幹線道路に面するなど、大規模な建物を建てやすい。
E 多摩ニュータウンでは再生事業に関連して、多摩市で都営住宅の建て替えが今後も進みそうだ。
A 用途別の開発動向はどうかな。
E 物流施設の開発が新しい潮流だ。延べ床面積で上位5件のうち2件が物流施設だった。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)のIC開発が引き金だ。これまで神奈川、千葉、埼玉の各県内で大規模物流施設の開発が先行しているが、都内でもその動きが出てきた。
F 青梅市内で進む大規模物流施設計画もさらに拡大するようだ。八王子市内でも大規模物流施設の開発計画が控えている。こうした動向からも目が離せない。

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