野原グループのBIM設計-製造-施工支援プラットフォーム『BuildApp』内装建材数量・手配サービスが成果を挙げている。直近では延べ3万㎡の物件に導入し、建材ロス率は石膏ボードが2%、LGS(軽量鉄骨)が6%となり、内装工事は10%を上回ることも多い中で高精度の施工を実現した。BIMのすそ野が広がり、モデリングからデータ利活用へと生産性向上のステージが進展する中、BuildAppが施工BIMのデータ活用を加速させている。平野洋行BuildApp事業統括本部BuildAppサービス開発統括部副統括部長兼BA1部部長に、同サービスを活用した生産性向上のポイントを聞いた。
--BuildApp内装建材数量・手配サービスの概要と導入状況は
内装工事店の番頭様が担う業務の抜本的な生産性向上を実現するサービスとして2025年2月にリリースしました。施工図相当のBIMモデルをゼネコンから受領し、BuildApp独自のプログラムで解析して内装工事に必要な建材数量を自動算出して提供するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)的サービスです。番頭様が担う図面からの数量拾いや発注業務は現場の業務全体の3分の1を占めます。それらを本サービスで自動化し、余った時間を施工計画や安全管理など付加価値の高い業務に振り分けることができます。
リリースから約1年半が過ぎ、スーパーゼネコンや準大手、中堅ゼネコンの現場で導入が進み、その現場に従事する内装工事店に導入を勧めています。現在は完工する現場が増えてきました。ゼネコンからは「内装工事の仕事が効率化するのならどんどんBIMモデルを使ってほしい」と協力いただいています。
直近では、本サービスを導入した延べ3万㎡のプロジェクトが竣工しました。石膏ボードを約1.7万枚、LGS約7000本を利用しました。通常は10%を超える余材が出るところ、ボードは2%、LGSは6%にとどまり、非常に高い精度を出すことができました。
番頭様に伺うと、当初の想定通り業務の3分の1が省力化され、よりしっかり施工計画を作成し、安全管理、変更管理の資料作り、他の物件の管理に時間を充てることができたそうです。継続してBuildAppを利用したいと話す工事店も増えています。元請け側も期待どおりの成果が出たことで、全国展開を予定するゼネコンが出てきました。
従来の内装工事の発注業務は、小出しの発注を繰り返すことでロスが出ないよう調整するのですが、それでも10%以上の余材が出ています。本サービスは、施工BIMモデルをしっかり準備できれば工事の初期に正しい数量をまとめて発注できるのが特徴です。実際に体験した職長によると「早い段階で通常よりまとめて建材が届き、多いのか少ないのか分からず心配したが、工事が進むとほぼぴったりになり全く問題なかった」そうです。
注文回数が多いと商社は手間が増え、メーカーも小口配送が増えます。運送業もドライバーが不足しており、サプライチェーンの下流に大きな負担をかけます。人手不足で今までと同じようなことができない世の中になり、BIMで生産性を上げることは必須と言えます。ゼネコンがしっかりBIMを作ることで、サプライチェーン全体に生産性向上の効果が行き渡ります。
本サービスの課題は、発注するまでのリードタイムが少し長いことです。プログラムの処理に時間がかかっているのですが、既に解決のめどが立ち、今後半分以下に短縮する予定です。
--導入現場のゼネコンのBIM活用状況は
ゼネコンの施工BIM活用は「施工計画」、各図面の干渉チェックなどを行う「総合調整」、「施工図作成」の三段階で進展します。一、二段階は主に形状を使い、三段階の施工図レベルの活用でルール整備、コスト、品質確保の面で難易度が一気に上がります。
現場に普及している施工BIMモデルのポイントは「目的に応じた簡略化」が前提となることです。BIMを作る際に時間、コスト、能力の高いモデラー不足といった課題があり、現実と完璧に整合した3次元モデルを各作業所で作成するのは困難な状況です。ゼネコンの会社を代表するようなモデル事業では、細部まで3次元で表現したBIMモデルを作成するケースもありますが、あらゆる現場で再現するのは難しく、「持続困難な施工BIM」とならざるを得ないのが実情です。
一方、現場に普及したモデルは3次元の表現を最小限にとどめるのが特徴です。最終的に平面の施工図として活用することが目的のゼネコンでは、必ずしも現実形状と一致する必要はありません。例えば天井や床のスラブに段差がある物件の場合、BIMモデル上で壁の高さ方向に不整合があったり、未表現部分があったりしても平面図として可読できれば問題ありません。目的に応じて簡略化したモデルが「持続可能な施工BIM」(普及モデル)として各現場で利用されているのです。
このため、普及モデルはゼネコンの目的は満たしても内装工事店が施工で使う精度は満たしません。BuildAppでは、ゼネコン各社がつくる普及モデルに対応した数量計算ロジックを独自開発しました。壁高さの不整合や未表現部分、性能壁の区別といった課題に対して、内装工事の実務者視点を考慮した補正プログラムでデータ処理を実施し、実際の施工に使える建材数量に変換します。
ゼネコンごとに簡略化のルールは異なるため、各社の傾向を分析し、個別の補正プログラムを作成して調整できるようにしました。ゼネコンがサブコンの領域までBIMを造り込むのは現実的に難しいため、“データの断絶”をつなぐハブとなるのがBuildAppの大きな目的です。
--高い精度を実現できた要因は
BuildAppは精度を上げるデータの一つとしてBIMを活用しており、私たちは設計事務所が作成する設計図書もチェックします。内装工事の番頭様の観点で、このプロジェクトの内装工事はどういうところに気をつける必要があるのか、独自のチェックリストをもとに読み込みます。
元請けの施工BIMを受領後は、設計段階にリスクとして抽出したところが施工BIMでどのように表現されているのかを当社がチェックします。その上でまとめた内容について番頭様と確認を行い、補正の条件を設定し、精度の高い数量を算出して番頭様に提供します。
この確認会は従来のワークフローにはない新しい工程ですが、チェックリストを活用して1時間以内の会議で仕様などを確認・合意します。施工段階における内装工事をフロントローディングする確認会は本サービスの「肝」であり、現場の“段取り八分”を実践する重要な工程です。そうすることで、若い番頭様が入った時、BuildAppを使えば熟練の番頭様と同じレベルの建材についての拾い業務ができるのです。
商社はもともと組織や人の間に立ってものを流通させるのが仕事です。ゼネコン、サブコン、メーカーの間に立って、データを流通させることが重要だと考えています。
--今後の展開は
当社は2次元図面から自動で数量を算出するサービス「拾いジョーズ」を10年以上提供しています。内装工事店が積算したり、実務で活用できる数量を出す知見やノウハウ、技術があり、それをBIMで使えるプログラムを開発中です。その技術を活用し、内装工事の面積など施工単位の数量を算出する独自のプログラム「施工数量・比較サービス」の開発を進めているところです。
こうした取り組みの背景には、労働力不足や資材価格の高騰、公共工事の入札不調などを背景に、従来の総価請負方式による慣習的なコスト管理から数量と単価の透明性を重視した契約形態への転換が進みつつあることが挙げられます。国もオープンブック方式などの普及を後押ししており、正確な施工数量データの重要性は今後さらに高まるでしょう。
海外では、BIMを使ってコストダウンし、削減分に合わせて得られるフィーを元請け、サブコン、職人など関係者で分配するIPD(インテグレーテッド・プロジェクト・デリバリー)が広がっています。IPDはBIMとセットのため、プロジェクトのコストダウンにBuildAppが貢献していきたいと思います。
BuildAppは内装から始まり、今年2月に「建具」をリリースしました。内装工事と建具工事は現場で密接に連動し、それぞれの進捗(しんちょく)が相手の工程に大きく影響します。複合的にサービス展開することで、内装工事のプロセス全体の変革を支援し、内装工事の生産性向上と業界全体の持続可能性に貢献していきたいと思います。





