野原グループが、内装工事初の本格的BIMプラットフォームとして今年2月にリリースした『BuildApp(ビルドアップ)内装 建材数量・手配サービス』が順調な滑り出しを見せている。BIMモデルから内装工事に必要なデータを取り出し、建材の数量計算、間配り(資材の配置計画)や揚重計画(資材搬入計画)の作成を自動化し、内装工事管理者の業務の3分の1を省力化することでゼネコン、内装工事店双方の評価を高めている。野原グループの高阪貴夫COO兼BuildApp事業統括本部長に、現場導入が着実に進むBuildAppの今後の展開を聞いた。
◇開発の背景とBIMのニーズ
建設業の生産性は過去30年間ほぼ横ばいで、現場ごとの仕様差が標準化を難しくしています。企画から完成までの期間も長く、内装だけで15工種あり、多くの人や組織がかかわるため、どの企業にとっても生産性の改善は容易ではありません。
さらに、コロナ禍以降は原燃材料費の高騰も急速に進みました。建設業の「24年問題」と言われる働き方改革、時間外労働の罰則付き上限規制の適用による労務費の上昇も課題となっています。生産年齢人口は2025年の約7300万人から45年には約5800万人まで急速に減少することが予測されています。建設技能者数は半減し、圧倒的な担い手不足とコストアップが同時進行する厳しい状況に直面しています。
これは、建設業に現状維持では経営が成り立たないフェーズが訪れることを意味しています。長年変わらない建設生産プロセスと低い労働生産性を抱えることで、まさに“建設業の激動の時代”に足を踏み入れたというべき状況にあります。この変化に対応する鍵は生産性向上であり、そのための切り札としてBIMが注目され、ゼネコン(大手建設会社)を中心に取り組みが拡大しています。
『BuildApp』はBIMを基盤とした設計・製造・施工支援プラットフォームです。資材調達から現場搬入、施工までの調整を自動化し、効率化を図ります。建築生産プロセスをシームレスに統合し、必要な建材を誰がいつ、どのような形で必要とするのかを可視化し、サプライチェーン全体の生産性向上を実現します。
◇野原グループがBIMに取り組む理由
野原グループは、創業400年を超え、会社組織としても1947年に設立した長い歴史を持つ会社です。特に建材流通事業の歴史は長く、得意先である内装専門工事会社や建材メーカーが参加するユーザー会を全国で運営するなど、さまざまな活動を続けてきました。
一方、建設業界では働き方改革の実施に加え、足元では改正建設業法が12月に施行されました。さらに、外国人技能実習生制度も2027年頃から育成就労制度へ移行する見込みで、業界課題やルールの変更など多様な動きがみられます。
こうした変化に対応するため、当社は業界の動向についての情報共有や課題の討議を長年にわたり得意先の皆さまと行ってきました。また、技能実習生の育成サービスや積算サポートシステム「拾いジョーズ」などの提供を通じ、微力ながら課題解決に取り組んでいます。
その時々の業界や顧客の課題に応えるのがわれわれの生業(なりわい)であり、BuildAppもその流れの中で生まれたサービスです。建築生産プロセスには多くの関係者が関わり、設計から調達・施工へとまたがる情報伝達や、さまざまな工種間の調整など、複雑なプロセスが存在します。こうした状況から生じる非効率を解消し、生産性向上につなげることこそ、われわれが貢献できることだという思いがあります。
そのため、デジタル技術を活用した生産性向上に着目し、21年にBuildAppのコンセプトを発表しました。その後もゼネコンや専門工事会社、建材メーカーなどと検証を重ね、『内装 建材数量・手配サービス』をリリースすることができました。
◇BuildAppの特徴と導入効果
従来は図面から資材を手作業で拾い出し、長さや重さ、数量などをアナログで計算するのに多くの時間を要していました。BuildAppを活用すれば、間配りや揚重計画を自動で作成でき、どの部屋にどの資材がどれだけ必要かを瞬時に算出して調達計画に反映できます。内装工事の現場管理者の工数の3分の1はこうした準備作業に集中するため、これらを自動化することでリードタイムの抜本的な短縮を実現します。正確なデータをアウトプットすることで業務の質も高め、標準化に寄与するなどさまざまなメリットを享受できます。
具体的には、BuildAppで元請けが作成したBIMデータを受け取り、内装工事に必要な情報だけを自動抽出して揚重や間配りなどの現場でリアルにものを動かす業務に活用します。こうしたBIMのデータを利用した新しい施工のスタイルの普及を図り、生産性向上に貢献したいと思います。
当社は、長きにわたりゼネコンや専門工事会社、建材メーカー、物流会社など、建築のサプライチェーンに関わる多くの企業と密に協業してきました。業種や工種、企業ごとのニーズを深く理解することで、それぞれに最適な価値をご提供できることが、当社の大きな強みと言えます。
例えば人手不足や資材高騰を背景に、ゼネコンではDXが進み、BIMの活用基盤が整いつつあります。そこにBuildAppを導入いただくことで、さらにBIMの実用性を高め、生産性向上に確かな効果を発揮します。
その時々のお客さまのニーズに応えることがわれわれのDNAであり、建設業の持続可能性や収益性向上に貢献していきます。そして私たちは、データの流通により、顧客に新しい価値を提供する商社にトランスフォーム(変革)していきたいと考えています。
◇建築生産システムの各工程におけるBIMの活用法
一般に設計段階では、施主や関係者との合意形成を進め、建物の要件と仕様を確定することが主目的となるため、施工に必要なレベルの詳細な設計作業はされません。このため、施工段階に入ってから施工図を改めて作成する必要があります。
また、設計段階では施工に必要な詳細情報が未確定であることから、仕様が固まった段階で準備作業に手戻りが生じることがあります。急な設計変更が発生した場合は、建材の調達リードタイムが確保できず、サプライチェーンが不安定になる恐れもあります。その結果、追加の人員手配が必要となり、余分なコストが発生しやすくなります。さらに、現場では廃材が増え、その処理費用がかさむ悪循環を招く可能性もあります。
そうならないよう、仕様の確定や必要な建材と数量確定のタイミングを早め、精度を高めるフロントローディング(設計段階で情報を前倒し確定する取り組み)が重要です。BIMを起点に設計-調達-生産施工の一連のサプライチェーンを効率化することで生産性が高まるため、BuildAppは建設プロセス全体をつなぐというコンセプトを掲げています。
そしてBIMは建築情報を統合した巨大なデータベースであり、その活用効果を効率的に引き出すには、運用方法の標準化が重要です。個人や現場、事務所ごとにばらついていたBIMの使い方を統一することで、サプライチェーン全体の生産性向上につなげることができます。
◇今後の展望
今年2月に『BuildApp内装 建材数量手配サービス』を正式にリリースし、すでに3物件で導入されています。それに加え、内定済みを含めて十数件で具体的な協議を進めており、さらに数十件の検討物件があり、その数は日々拡大しています。順調な滑り出しとなり大きな手ごたえを感じています。
26年は『BuildApp内装』の機能拡張を継続するとともに、内装の次の工種展開として『BuildApp建具』のトライアルを開始する予定です。各種建築情報から得た情報をもとに、製作施工図を自動作図し、建具サブコンの業務を大幅に削減します。この製作施工図と加工工場の製造CADをデータ連携することで製造側のリードタイムの削減も実現します。内装工事と建具工事は施工現場で密接に連動しており、それぞれの進捗が相手の工程に大きく影響します。そのため各工程のリードタイムを短縮することは、単一の工種にとどまらず、現場全体の効率向上につながる大きな効果を生み出します。
顧客には当社の営業が窓口となり必要なサポートを提供するため、安心してご利用いただけると思います。内装工事店からは「長いあいだ内装工事には大きな技術革新がなかったが、新しいサービスが省力化の一手になると思っている」という感想をいただきました。また「数量がクリアになることで若手にとって分かりやすい業界になる」「現場と工事店の業務を研究している印象を受けた」というポジティブな評価をいただいています。
ゼネコンからも「業界全体で人手不足が深刻なため、工事店の業務負荷が削減されることはとても良いこと」という意見や「BIMから資材の発注数量が自動的に算出されることは透明性を向上させるためにも良い」「サービスが地に足ついている」「このレベルで提案してくるのは野原グループだけ」というありがたいご意見もいただいています。
グループですでに事業を展開している鉄筋やセメントなどの躯体工事にもBuildAppを展開することを視野に入れています。内装や建具を含めて建築とサプライチェーン全体を含めた全体視点をもってサービスを展開していきます。
今やBIMは大手設計事務所やゼネコンで広く活用されるようになり、その利活用は今後ますます深化していくと考えます。ここでいう深化とは、例えば施工段階で具体的な生産性向上につながるBIMの活用レベルをどこまで実現できるかということです。BuildAppは、まさにこの領域で価値を発揮するサービスであり、現場での活用が自然に広がる状況にしていきたいと考えています。














