国産原料で価格と供給体制安定、ゼネコンなど建設業界から好反応 不燃性能、吸音・施工性に優れる
中東情勢の緊迫化に端を発した「ナフサショック」や物流費の高騰により、断熱材の価格が過去に例を見ないほど急上昇している。こうした環境において、国産材料を原料とするロックウール系吹付断熱材「EM不燃断熱材Neo」が、石油価格変動の影響を受けにくい点や安定した供給体制から建設業界内で注目を集めている。国土交通省が3月に公表した「防火材料の安全性向上に関するガイドライン(2026年3月)」では、不燃ウレタンなどを10月1日以降に着工する建築物に新たに使用する場合、「無機系材料で適切に被覆し、表面を室内に露出させないことを施工上の条件とすることを予定している」と明示したこともあり、EM不燃断熱材協会にはゼネコンなどからの問い合わせが急増しているという。
無機繊維と無機高分子結合材を使用したロックウール系吹付断熱材「EM不燃断熱材Neo」(EM不燃)は、19年に同協会の正会員企業であるエーアンドエークレスト、ナイガイ、太平洋マテリアルの3社に
よって共同開発され、20年から本格展開を始めた。EM不燃はオフィスや店舗、機械室、地下駐車場といった不燃断熱材が使用される箇所のほか、内装材を使用しない現し(あらわし)仕様の工場での採用が多い。大手ゼネコンを中心に数多くの実績を有し、一部のゼネコンでは条件付きで標準仕様に含まれるなど定番品としての地位も築きつつある。その特徴は高い不燃性能や吸音性、施工性だ。主材料のロックウールは、製鉄副産物の高炉スラグが原料であり、使用している結合材を含め100%無機材料で構成されることから、不燃性能に優れる。エーアンドエークレストの山本千奈津氏は、「有機系断熱材で懸念される、溶接作業などで発生した火花による火災リスクや有害な煙の発生がない」とし、断熱性能についても「吹付硬質ウレタンフォームほどではないが、他の不燃系断熱材より優れた断熱性能を持つ」と語る。
吸音性にも優れ、第三者機関による残響室法吸音率試験で、広く吸音材として知られるグラスウールと同等の性能が確認されているという。太平洋マテリアルの多田亘児氏は「機械室などで吸音率が低い断熱材を使用すると音が反響してしまうため、断熱材の上から吸音材を貼り付けるケースもあるが、EM不燃はそうした付帯工事も不要となる」と工程面でのメリットを挙げる。
施工性の高さも特徴の一つだ。吹付工法で複雑な形状にも対応できる。ナイガイの田中博晃氏は「厚さ50㎜の場合、1日で約100㎡を施工できる。厚吹きでは天井面は最大70mm、壁面は最大80㎜まで対応でき、加えて下吹き(複数回の吹付施工)も不要となるため、養生作業も一度で済み、工期短縮やコスト削減にもつながる」と説明する。
こうしたメリットに富むEM不燃だが、「これまで知名度の低さや、吹付ウレタンと比べ約1.3倍という施工コストの高さから、他の断熱材に後れを取ってきた」と田中氏は振り返る。しかしながら、中東情勢の緊迫化で原油価格が高騰し、石油由来製品のコストや調達面での影響が深刻さを増す中、多田氏は「有機系の断熱材価格にも大きな影響が及び、状況は一変した」との見解を示す。国産材料を原料とするEM不燃は価格変動の影響を受けにくく、供給面での安定性も強みとなっているからだ。
他方、国交省は不燃材料の大臣認定を取得していた吹付ウレタンフォームについて、模型箱試験を実施したところ約30秒で急激に燃焼が拡大する事象が見られたとして、3月に「防火材料の安全性向上に関するガイドライン(26年3月)」を公表した。同協会は「火災時の防火材料の落下・脱落への注意や材料端部・目地部の適切な処理など、業界全体で防火性能の再確認が求められている」として、21年に自主的に第三者試験機関による模型箱試験を実施していた。山本氏は「国交省ガイドラインと同等の判定基準に基づき、規定時間(20分)を上回る30分間の加熱試験でも着火・発煙・亀裂・脱落は確認されず、高い安全性が実証されている」と自信を示し、「無機系材料の安全性の高さを広く知っていただきたい」と話す。
建設業界では人材不足により作業員の確保が課題となっているが、EM不燃は鉄骨の耐火被覆と同じ施工業者が担当でき、全国的に展開可能な施工体制が整っている。同協会はこうした環境を追い風に、さらなる展開に向けて認知度向上に力を入れる。EM不燃は協会で展開する場合の製品名称であり、個社で展開する際には、それぞれ『フェザーロックNeo』(エーアンドエークレスト)、『サーモテックスEco-i』(ナイガイ)、『太平洋ヒートロックエコ』(太平洋マテリアル)の名称で販売している。多田氏は「EM不燃は発売から間もなく、まだ知名度が十分とは言えない。引き続き周知活動に力を入れていきたい」と意気込む。


