--展覧会が大変好評です
「展覧会が始まる前に来場者10万人、1日当たり約1500人に来てもらおうという目標を立てた。さすがに数字が大きすぎたと思っていたところ平日で2000人、週末だと6000人を超える日もあると聞いて、ちょっと驚いている」
--見どころは
「ひとつはやはり、実寸大で再現した『光の教会』だろう。宗教施設という性質上、信者の方以外普段はなかなか立ち入ることができないが、大阪人らしくサービス精神を発揮して、やるなら大胆に行こうと(再現を)決めた。ちょっとしたポイントもあって、今回再現された光の教会の十字架のスリットにはガラスを入れなかった。実際は教会側の要請でスリットにガラスを入れた経緯があるが、当初の計画どおりガラスを入れないことで自分なりに『原点』を示しておきたかった」
「住宅が原点というのはまずこの建物が私の実質的なデビュー作になったというのがひとつ。それと建築を考える上での原点、つまり建築とは何かという問いかけを忘れないよう、意識的に住宅をつくり続けてきたということもある。さらに言うと、住宅とは住まう人にとって魂が宿る場所でもある。私にとって魂の居場所とは大阪のアトリエになるが、多くの人にとって住まいこそが魂の居場所としては一般的であろう。だから住宅を設計することには特別な意味があると思っている」
--建築や環境を対象とした再生も大きなテーマのひとつです
「再生をテーマとしたコーナーでは今回最新のプロジェクトとして現在パリで進行中の『ブルス・ドゥ・コメルス』を紹介している。ここは19世紀に穀物取引所だった建物で、中にコンクリートの円筒状の空間を入れて美術館として再生しようとしているのだが、かつて手がけたプンタ・デラ・ドガーナ(イタリア)と同様に古いものと新しいものが混然一体となることで、次の時代に向けて新たなメッセージを発信することができるだろう」
「建築は手をきちんと入れさえすれば100年、200年と長く使うことができる。古い建物を保存し再生することの素晴らしさをことあるごとに訴えてきたが、こうした事例を改めて紹介することで、歴史や伝統を継承することの大切さを考えるきっかけになればと思っている」
--展覧会をどういった人たちに見てもらいたいですか
「20代のはじめに建築家になることを志してから、ずっと全身全霊をかけて走ってきた。心のなかに燃えたぎる情熱を宿し、青春の中に今も生きている。青臭いままでもいい、最後まで全力投球し、人々の記憶に残る建築をつくり続けたいと思っている。だからこの展覧会は私ひとりの展覧会ではない。私と25人の所員、そしてこれまでともに建築をつくりあげてきた建設業に働く全ての人たちのためにでもある」
「多くの人たちが新しいこと、刺激を求めている。建築家の仕事も十分、その対象となり得ることを示している。建築界に関わる人たちにこそ、みてもらいたい」
◆国立新美術館で12月18日まで
「安藤忠雄展―挑戦―」は「原点/住まい」「光」「余白の空間」「場所を読む」「あるものを生かしてないものをつくる」「育てる」という6つのセクションで構成。模型や設計図、ドローイング、映像など約270点が並べられ、半世紀にわたる活動の軌跡を追体験できる。会期は12月18日まで。