【安藤忠雄 初期建築原図展】東京都・国立近現代建築資料館にて図面や模型、初公開の建築資料を展示 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【安藤忠雄 初期建築原図展】東京都・国立近現代建築資料館にて図面や模型、初公開の建築資料を展示

 文化庁は、東京都文京区の同庁国立近現代建築資料館で「安藤忠雄初期建築原図展-個の自立と対話」を開催中だ。安藤氏の初期の建築資料である1990年ごろまでの20数作品について手描きの建築設計図面、スケッチなどを集めた。模型中心のこれまでの展覧会とは違って、1枚1枚から寡黙に図面に向き合う安藤氏のエネルギーが伝わってくる。「1枚の図面の中に設計者の意思を凝縮させたい。図面は設計者の言葉だ」。これは安藤氏の一貫した姿勢である。平面図、断面図、透視図、アクソノメトリック図などを重ねて3次元性を高めた精緻で美しい図面が数多く並ぶ。23日には会場で安藤氏のトークも開かれた。

トークでは対話の重要性と海外に 積極的に行ってみようと呼び掛けた

 展示されているのは「住吉の長屋」(1976)、「小篠邸」(81)、「六甲の集合住宅I」(83)、「TIME’sI」(84)、「城戸崎邸」(86)、「水の教会)(88)、「光の教会」(89)など国内に現存する作品の図面や模型、初公開の建築資料。
 自ら「挑発する箱」と名付けた「住吉の長屋」の断面詳細図は、見た瞬間にコンクリートの打ち放しであることが伝わってくるリアルさと精緻さが兼ね備わっていて、美しさに引き込まれてしまう。「光の教会」は、十字架のスリットの壁から見た透視図がこの建築を雄弁に物語る。図録には「安藤は、コンクリートの箱が高い精神性を持つ空間となるために、光の十字架を発見した」と書かれている。透視図はこの象徴性を的確に表現している。

『光の教会』。スリットの十字架の壁から見た透視図で、建築の象徴性を雄弁に物語る

 テーマの「個の自立と対話」は、都市、自然、光、歴史風土などとの対話を通して個々人が自らを見出し、深め、自立するための空間づくりを追い求めた初期の安藤氏の思いを表すものだという。
 展覧会実行委員の川向正人同館主任建築資料調査官(東京理科大学名誉教授)は、「今回の原図展を見ると、自らの内部にある安藤像が大いに揺さぶられる感覚を覚えるに違いない」と述べる。同じ実行委員の古山正雄京都工芸繊維大学名誉教授は「(アーカイブスの設立によって)安藤の手描き図面に刻印された身体の軌跡もまた永遠に保存されるのだ」、伊藤毅青山学院大学教授は「初期建築原図は、私にとって、広がる海原に旅立つために何度も書き直された海図のように見える」とそれぞれ指摘している。
 23日のトークは川向氏がモデレーターを務め、安田幸一東京工業大学教授、国広ジョージ国士舘大学教授、城戸崎和佐京都造形芸術大学教授が加わり、安藤氏と手描き図面の話などが展開された。東京工業大学、国士舘大学、青山製図学校の生徒らが多数参加した。
 川向氏は、「きょうの話で大切なことは、思いであるとか熱意、衝動などが図面の中にまずあって最終的に作品になるということ。図面の整理をさせていただいたのは本当に貴重な時間だった」などと述べた。安藤氏は、コンピューターが1人でやるところに難しさがあるように思うとし、「チームで進めるとお互いに考えていることが分かる。対話をしなければ」と話した。参加した学生に向けては、「アジアなど海外に行ってみることが大事だ。困難さは意志と責任感があれば乗り越えることができる」などと激励した。
 当日は2回のトークに臨み、2回目は、川向氏のほか中谷礼仁早稲田大学教授を交えて話を展開した。
 展覧会は9月23日まで。無料。午前10時-午後4時半。

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