建設業界の深刻な担い手不足に対し、清水建設横浜支店と取引業者団体の「横浜兼喜会」が取り組むのが、高校生を現場アルバイトとして受け入れる「担い手さがしプロジェクト」だ。従来の会社見学会や講演会から一歩踏み込み、実作業を体験してもらうこの意欲的な試みは、職業安定法に基づく正式な届け出を経て、地道な高校訪問から始めた。口コミで広がった参加者は昨夏の4人から今夏14人へと大幅に増加し、実施後のアンケートでは、ほとんどの参加者が「建設業は選択肢の一つになった」と回答するなど、高い満足度を得ている。業界全体の裾野を広げる草の根の挑戦に迫った。
両者はこれまでも、高校での講演会や現場での親子見学会などを通じて建設業への理解を促してきた。しかし、求人サイトなどに登録しても応募につながらない現状や、技能労働者の高齢化に伴う危機感は拭えなかった。
そこで出たのが、「もっと早い時期から声掛けしないとダメだ。高校生アルバイトを受け入れよう」という発想の転換だったと、横浜兼喜会の浅岡新二会長は説明する。
職業安定法第36条に基づき、神奈川労働局に募集委託を届け出た上で、現場近くの高校を直接訪問。ポスター掲示やチラシ配布の許可を得るところから、地道な取り組みを始めた。
清水建設の富永秀行執行役員横浜支店長が「ブラックじゃない、きつくない、意外と面白いという口コミが広がってほしい」と語るように、リアルな就業体験を通じたファンづくりが最大の狙いだ。
プロジェクトでは、春休みや夏休みの期間中に受け入れやすい建築現場を選定し、16歳以上の高校生を対象に、午前9時から午後3時まで時給制(半日単位も可)で受け入れる。作業内容は安全性を考慮し、軽微なものに厳選している。
時給は2000円に設定し、5時間勤務で日給1万円となる計算だ。さらに、現場で熟練職長が付きっきりで指導・安全管理を行う協力会社の負担に配慮し、清水建設から協力会社へ費用を支援する独自のスキームを構築した。
「僕ら建設業で一番大事なことは、けがをさせてはいけないこと」と浅岡会長が語るとおり、安全管理も徹底している。最初の数日は段差や危険箇所についてレクチャーし、作業への理解を深めた上で、実際の作業を手伝ってもらう。
参加者は第1弾となった昨夏が4人、今春が8人、今夏は14人と着実に増加している。今夏は厳選された2現場で、内装工事のサンオキ、塗装工事の建装工業、とび工事の山清工業、金物工事の小山金属の4社が受け入れた。
ポスターを掲示していない学校や遠方の生徒からも「友達の口コミ」で応募が相次いだといい、終了後のアンケートでは満足度が5点満点中約4.7点に達した。
「意外に奇麗だった」「こんなに奇麗に出来上がってくるんですね」と目を輝かせる高校生も多く、実際の現場を体験することで、建造物への愛着や仕事への誇りが芽生えているという。
「何よりも『ここ俺がやったんだよ』と一生言えるのは、ものづくりとして良い体験」と浅岡会長。意識の変化は着実に表れている。さらに、「実際、アルバイト体験を通じて、とび工事の協力会社への入社が決まりそうな事例も生まれている」と手応えを口にする。
横浜支店の鈴木豪調達部長が「清水建設のためではなく、建設業全体の裾野を広げる草の根の活動」と強調するように、この取り組みは自社の利益を超え、業界全体の未来を見据えたものでもある。「仮に将来、別の道へ進んだとしても、選択肢の一つとして建設業を思い浮かべてほしい」と語る姿には、そんな願いが込められている。
『千里の道も一歩から』という言葉のとおり、プロジェクトは継続的な人材発掘を目指している。「1人が10人になり、10人から100人になればいい。最終的に建設業に入る人が100人増えれば万々歳」と浅岡会長は笑顔で語る。地道だが、着実な一歩の積み重ねが、建設業界の未来を切り開いていく。


