【本】「地霊」を追って日本各地の建築を読み解く 竹中工務店広島支店・門谷氏の一冊 | 建設通信新聞Digital

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【本】「地霊」を追って日本各地の建築を読み解く 竹中工務店広島支店・門谷氏の一冊

『日本の〈地霊〉』鈴木博之著(講談社現代新書、680円+税)
 突然ですが、国会議事堂の中央屋根が、どうしてあのようなピラミッド型屋根になっているかご存知でしょうか。この本の著者の鈴木博之先生は、東京大学建築学専攻の教授をされていた後年、「地霊(ゲニウス・ロキ)」という概念を追い続けられていました。
 ラテン語「ゲニウス・ロキ」の意味は、「土地に対する守護の霊」となっているらしいですが、「地霊」は、ある土地から引き出される霊感とか、土地に結びつく連想性、あるいは土地がもつ可能性といった概念になり、その土地のもつ文化的・歴史的・社会的な背景を読み解く「土地の記憶」とも言えるそうです。
 この本は、そんな地霊を追い日本各地を訪ね、知慮深く考察されています。冒頭の国会議事堂のピラミッド屋根の謎も解けますし、広島の平和記念公園の丹下健三先生の計画を、宮島の厳島神社との配置関係から読み解かれています。
 現代建築だけでは味わえない、土地の文化的・歴史的・社会的な背景に興味のある方はぜひどうぞ。鈴木博之先生は残念ながら2014年に他界されてらっしゃいますが、日本建築学会著作賞受賞の『庭師小川治兵衛とその時代』が遺作とされています。  (竹中工務店広島支店設計部長 門谷和雄)

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