【バーチャルツアーマニュアル】パノラマ写真に設備情報ひも付け 情報共有・省スペース化を可能に | 建設通信新聞Digital

5月9日 木曜日

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【バーチャルツアーマニュアル】パノラマ写真に設備情報ひも付け 情報共有・省スペース化を可能に

バーチャルツアーマニュアルの画面イメージ

 3次元(3D)スキャナーの活用を主軸とした日比谷総合設備の「現場調査支援システム」が、原点回帰のアプローチをきっかけに新たな広がりを見せている。設備の形状や寸法などを正確に計測できる3D画像(点群データ)を作成・提供するのがメインサービスだが、より手軽に低コストで、デジタル化の恩恵を受発注者双方が受けられるよう、360度パノラマカメラを使った「バーチャルツアーマニュアル」を誕生させた。パノラマ写真に、設備機器に関する各種図面データをひも付けし、システム上で膨大な書類を統合・閲覧・保管できるようにした。 近年普及が進む3Dスキャナーに注目が集まりがちだが、同社の現場調査支援システムには、もともと3つの段階があった。フェーズ1がパノラマ写真活用で、フェーズ2が点群データ保存、フェーズ3がBIMやFMへの応用を見据えたCADデータ化だ。バーチャルツアーとデジタルマニュアルを統合させた新たなサービスは、フェーズ1の進化版と言える。
 業界全体での議論が求められることなどから、BIMとFMの連携などにはまだ相当の時間を要するとみられるが、「ストック時代は、もうそこまで来ている。まずはフェーズ1から見直すことにした」と技術統括部の友寄光男部長は振り返る。その根底には、現場業務を省力化するための働き方改革があった。
 バーチャルツアーマニュアルは、360度パノラマカメラで室内を撮影し、そこに写る設備機器ごとに、それぞれの仕様書や取扱説明書、完成図などの図面データをひも付けていく。
 画面上の設備をクリックすると、図面が瞬時に表示される仕組みとなっている。ウオークスルー機能で室内をスムーズに移動することで、現地に行かなくても機器や配管などの位置関係を確認できる。中規模ビルの機械室の場合、必要な図面データがそろっていれば、撮影から納品までを1週間程度で完了できるという。データはタブレット端末ごと顧客に納める。
 通常、完成図や説明書などは予備を含めてファイル何冊分にも上るが、その作成にかかっていた労力が大幅に減る。紙ベースから、複数人で情報共有ができるデジタルデータへの移行は、内勤社員とのワークシェアを可能にし、その分、現場担当者は本業の施工管理などにより集中できるようになる。
 ペーパーレス化のメリットは発注者側にも波及する。エンジニアリングサービス統括本部管理部の佐藤純一主任は「保管場所の省スペース化になり、図面データも探しやすい。何か不具合があった場合には、顧客とわれわれが遠隔で同じデータを見ながら検討できる。われわれも現場に行く回数が減らせるし、顧客も待ち時間や立ち会いの回数を減らせる」などと期待できる効果を列挙する。
 佐藤主任によると、これまでに2件の納入実績があるという。第1号となった病院の熱源機械室の改修工事では、注文者であり、アイデア出しなども行った東京ガスグループの設備工事会社、キャプティ(東京都品川区)と共同でシステムを組み上げた。両社で特許も出願中だ。それとは別に、大学病院の新棟建設に伴う設備工事の入札で技術提案し、採用された実績がある。
 また、現在都内に建築中のオフィスビルでは、空調設備以外に電気設備なども加えて、よりメリットが広がる総合的なバーチャルツアーマニュアルを構築する見込みだ。
 新設から維持管理、更新までを見据え、日比谷総合設備が基本戦略の柱に掲げる「ライフサイクルトータルソリューション」の高度化の一環として生まれたこの技術。受発注者双方の生産性向上や業務削減などに 寄与する手軽で実務的なサービスとして、同業他社との差別化提案に活用していく。

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