【前田建設】あらゆるステークホルダーの視点から建設プロジェクトを見通す力に ファンタジー営業部の15年 | 建設通信新聞Digital

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【前田建設】あらゆるステークホルダーの視点から建設プロジェクトを見通す力に ファンタジー営業部の15年

最新コンテンツ『マジンガーZ/INFINITY』では原価開示方式を武器にプロジェクトをマネジメントする((c)永井豪/ダイナミック企画・MZ製作委員会)

 前田建設のウェブコンテンツ『前田建設ファンタジー営業部』が発信から早15年の節目を迎えた。「社会的課題の発見につながっている」と、すべてのコンテンツ製作にかかわってきた岩坂照之CSR・環境部長は活動の成果をかみしめている。最新作では劇場公開中の映画『マジンガーZ/INFINITY』とコラボレーションする形で、CMrとして建設プロジェクトをまとめ上げるストーリーを展開。ファンタジー営業部の活動は同社に何をもたらしているか。 マジンガーZの地下格納庫を72億円と見積もったのは2003年のことだ。空想世界に存在する建造物を現在の技術や材料で具現化することをコンセプトに、その分析を巧みなストーリー展開で描いてきた。これまでに銀河鉄道999、機動戦士ガンダム、宇宙戦艦ヤマトなどを題材に、番外編を含む9編を発信した。
 最新作は、岩坂氏と総合企画部経営企画グループマネージャーの綿鍋宏和氏が手掛けた。設定したミッションは光子力プラントの改造工事。ドクターヘルの依頼を受け、ファンタジー営業部がCMrを担当、新たな契約形態の1つとして注目されている原価開示方式を使い、調査・設計者の鉄十字軍団と施工者の鉄仮面軍団をコントロールする。
 「1年半ほど前から原価開示のネタを仕込んでいた」という綿鍋氏。同社は03年に大学校舎新築工事に初適用し、これまでに10数件のプロジェクトで原価開示方式の実績を積んできただけに、ウェブコンテンツとして取り上げることで「透明性の確保が実現できる原価開示の有効性をもっと広めたい」との思いもあった。CMrとプロジェクト関係者が共存し、任務を遂行するストーリー構成は映画製作側の賛同も得た。
 「潮目が変わったのは4作目からだった」と、岩坂氏は15年の歳月を振り返る。06年に発信した『世界初!ロボット救助隊を創ろう』を機に、外部からの問い合わせを受け、企画が具体化する流れになった。番外編のサンダーバードやドミノ・ピザ月面店舗の2編については企業から制作を依頼され、実現に至った。
 地道な活動は、人材採用面でも効果として表れている。新卒採用では事務系志願者のほとんどが面談時にファンタジー営業部の存在を口にする。昨年入社した経営管理本部の長瀬すみれさんもその1人だ。「ファンタジー営業部や脱請負に取り組む自由な発想の会社である部分にひかれた」

未来の百貨店提案

 顧客(企業)の受け止め方も変化した。宣伝の観点から、ある自動車メーカーから展示の壁画プロデュース、ある百貨店からは未来の百貨店プランを依頼された。岩坂氏は「そうした顧客とは損得勘定なしに本音で話すきっかけとなり、より濃いつきあいができる。そこから社会的課題の発見にもつながっている」と強調する。
 同社はCSV(共有価値創造)経営を掲げ、社会的課題の解決を進める中で「ファンタジー営業部の活動を通して、あらゆるステークホルダーの視点から建設プロジェクトを見通す力が備わってきた」と自信を示す。ことし12月に完成する新技術研究所(茨城県取手市)で展開するオープンイノベーションには「ファンタジー営業部で得た考え方やノウハウが生かせる。技研の若手もコンテンツづくりに参加してもらいたい」との思いを込める。

まとめ役の岩坂氏(右)と中心メンバーの綿鍋氏

 活動開始から15年。これまでに100人ほどの社員がファンタジー営業部にかかわってきた。発足時から中心メンバーとして活動してきた綿鍋氏は「突き抜けた発想で仕事が進められることが魅力。これからは自由な発想が求められるオープンイノベーションと密接に関係してくる」と感じている。
 まとめ役として活動をけん引し続ける岩坂氏は「われわれの活動は自由な発想の訓練の場でもある。空想世界という極端な条件下で建設プロジェクトを成立させるには従来の発想を飛び越え、新たな視点からものづくりを見つめ直すことが大切」と期待を込める。
 間接的ではあるものの、本業の工事受注にも効果が表れつつある。ファンタジー営業部のファンという企業のトップからは工事の競争参加への打診を受けたほか、受注提案の際にファンタジー営業部の功績が評価されたこともある。同社の自由な発想が企業の個性として認められる流れが出てきた。

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