【記者座談会】就職活動スタート 多様な人材の確保に新卒採用の競争激化 | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【記者座談会】就職活動スタート 多様な人材の確保に新卒採用の競争激化

今春の大手・準大手ゼネコンの新入社員は3,500人にも達する(写真は竹中工務店の昨年の入社式)


A 2月23日付の本紙記事でもあったように、ゼネコンの新卒採用数が近年安定してきた。好業績に呼応したという見方もできるが、一方で今後は現在の採用水準を維持することの難しさが鮮明になってくるだろう。各社に実施したアンケートでも、その兆しが見え隠れしている。
B 大手クラスでは清水建設の290人を筆頭に、残る4社も220-280人規模の採用を確保した。準大手も同様だ。194人の五洋建設を始め、9社が100人以上の新入社員を受け入れる。2016年4月採用から3年連続で大手5社は合計1300人規模、大手26社は2000人強の採用を続けている。20年以降も、8割が今春の18年4月採用規模を維持するという回答を得ており、今後の大手・準大手クラスの採用数は3500人規模で推移していく。
A アンケートで注目すべきは今春採用の手応えの部分だ。記事でも少し触れたが、安定している採用の裏側では各社が予定数の確保に苦戦している状況も浮き彫りになった。ゼネコン志望者自体が減少傾向となり、加えて他社との競争が激しくなったことがその要因になっている。こうした売り手市場の傾向は年々強まるだろう。
B 確かに例年のアンケートでは、これまでも採用に苦労した企業は数社あったが、大半のゼネコンは計画数を確保できていた。今春は31社中10社の約3分の1が予定人数を確保できない結果となり、例年よりも新卒採用が厳しい状況に追い込まれた。大手でも予定確保に苦労した社があり、来春はさらに厳しい状況になりそうだ。
C 採用に苦慮しているのはゼネコンだけではない。道路舗装会社では新卒者を予定どおり確保できた社が1社もなかったほか、設計事務所、建設コンサルタント、設備工事業も同様に苦労している状況が目立った。設計事務所ではゼネコンなどが採用を増やしている影響を指摘する声もあり、分野ごとだけでなく、建設産業界内で人材を取り合う状況もうかがえる。
D それにしてもゼネコンを筆頭に好業績を続ける建設産業界だが、各分野で新卒採用に苦戦している状況を考えると、業界自体の魅力が薄れているのかと受け止めざるを得ない。初任給引き上げなど新入社員への金銭的な待遇を手厚くする動きが例年より高まっているのも、その対策の1つといえそうだ。
B 働き方改革に本腰を入れ始めた建設産業界だが、現場を支える技能者などの担い手だけでなく、現場を統括する技術者の確保にも力を注ぐ必要がある。ゼネコンでは現場担当者のスケジュールを調整しながら4週8休の定着に乗り出す動きが拡大しているだけに、さらに現場の週休2日(4週8閉所)が実現すれば、新卒採用にも少なからず好影響を与えるだろう。
C 18年度から19年度にかけて手持ち工事の施工がピークを迎える中、各社は長期的な視点から人材確保に乗りだそうとしている。少子化の進行ともに国内建設投資の先細りは否めない。ゼネコンは海外や新事業の開拓により、現行の業績規模を確保しながら飛躍する戦略図を描いているだけに、今後は建設分野以外の人材も求められる。
D 将来的には新卒採用で建設以外の技術者を確保する流れも強まるだろう。そうなれば企業単体だけでなく、建設産業界自体の評価はより問われる。開発事業、再生エネルギー、管理運営、さまざまな重点分野でスペシャリストの確保・育成をどう進めるか。ゼネコンにとって今後の人事戦略の重要なテーマになることは間違いない。

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