【大建工業】訪日観光客に人気の和室に注目 メンテ性高く丈夫な和紙畳おもてに勝機 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【大建工業】訪日観光客に人気の和室に注目 メンテ性高く丈夫な和紙畳おもてに勝機

大建工業市場開発部副部長 中西栄治氏に聞く

 来日した外国人観光客の間で、和室に宿泊することが人気を集めている。インバウンド需要で宿泊施設の建設が増えていることを背景に、大建工業は、こより状に仕上げた機械すき和紙の畳おもて事業を強化する方針を打ち出した。「和紙ならではの柔和さを残しながら、メンテナンス性が高く、紫外線による色落ちや傷にも強いことが特長」と中西栄治市場開発部副部長は説明する。今後の展開と製品の魅力を聞いた。
 和紙の畳おもては、樹脂コーティングによる防汚性や耐久性の高さと、和紙ならではの肌触りや調湿性が売りだ。「日本製の畳を残そうという思いから素材探しを始めた。冠婚葬祭用の水引を作る技術を応用して、緑の和紙でこよりを作ってい草の代わりにしたところ、品質安定性を買われ、ハウスメーカーのオファーから採用が広がった」

上質さの証である繊細な織り

 市場全体における畳おもての年間出荷量は約1200万畳。このうち大建工業の「DAIKEN健やかおもて」はシェア1割程度を占めている。「個人住宅の着工が頭打ちになり、住宅向けの市場は今後縮小していく。長期経営計画にも、公共・商業建築を重点市場に掲げたが、畳おもて事業でもホテルや旅館向けはますます重要な市場になる」
 「京都の高級ホテルでは『和モダン』がトレンドだ。洋室とも合わせられるデザイン性を求められる」。新製品として繊細な織りの「銀白 極(きわみ)山葵色」や、伝統模様の「市松」を追加した。「日本の畳は織りの細かさが上質さの証。格調高い空間に合う」と説明する。

「市松」を追加

 地方観光都市の旅館やホテルもターゲットだ。「汚れを浮かせて上から吸い取るメンテナンス方法が旅館業界になじみがなく、普及が遅れた。改めてメンテナンスの説明にも重点を置くようにして売り上げ増を目指している」。模型を使い、説明に回っている。
 長年の課題はコスト面だった。「中国産のい草製の畳おもての3倍の価格で、開発当初は『本当に売れるのか』と聞かれたが、『健やかおもて』は傷や日焼けに強く、耐久性が高いので、い草製の3倍長持ちする。職人を呼んで畳替えする費用や、ダニ・カビの除去費用がかからないため、価格面では合理的だと説明している」
 2017年には福島県会津若松市の会津大建加工(福島県会津若松市)に1億5000万円を投資し、年間48万畳まで生産能力を拡充した。余力ができた分、さまざまな用途への展開も加速する。
 「畳業界の高齢化により、省施工タイプの需要もあり、規格畳『ZIPANGここち和座』の販売にも注力している。なかでも置き敷きタイプは床と同じ高さにそろえられ、見切り材で縁を抑えれば端のほつれも隠せる優れもの。幼保施設でも使えるように防炎認定も取った」。さまざまな用途に向け、開発を進める。

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