【本】事業承継は「辞める日」を決めることから 著者・津島晃一さんに聞く | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【本】事業承継は「辞める日」を決めることから 著者・津島晃一さんに聞く

『お金をかけない事業承継 かわいい後継者には“個人保証”を継がせろ』(同友館 1600円+税)

 「事業承継はリスクの高い災難です。だからこそ、『辞める日』を決めることが大事」だと説く。それは、津島氏の歩んだ人生航路を反映している。
 1978年早稲田大学法学部卒、同年松下電工(現パナソニック)入社、81年松下電工退社、同年(株)光建設(現ヒカリ)取締役就任、90年代表取締役就任、2008年代表取締役社長辞任・取締役会長就任、12年神戸大学経営学修士号(MBA)取得、同年ヒカリ取締役退任・相談役就任、17年喜悦大学大学院博士号(経営管理)取得、18年事業承継Lab.開設・所長。
 「今回出版した『お金を掛けない事業承継』は、1つの集大成です」と話す。そして、松下電工時代の上司の「仕事は自分がいなくてもうまくいくようにやっておくものだ」との教え。先人たちの箴言、さらに3人の親しい社長の最期(自殺)などが、事業承継、個人保証への関心を高め、経営引き渡し後の学研生活にもつながっている。
 「光建設2代目社長の実父が急逝、先代社長が3代目を継がれましたが、病気になり、私が代表取締役副社長を経て4代目を就任しました」「社長就任とともにバブル崩壊時の多額の借金返しが10年ほど続きました。個人保証の厳しさも痛感させられました」。この実体験が「後継者の知りたいこと」につながり、「『いつ辞めるのか』『いつまで給料を払えばいいのか』などを明確化することや、子会社の経営を任せ、資金繰りなどの経営資質を学ばせることによって『後継者の育成』も計画的に進めてきた」とのこと。
 津島氏は予定どおり社長職を18年で退任、育てた5代目に承継、そして「光建設はヒカリへと社名を変えて」、5代目と時期を少しずらして育てた6代目の時代になっている。
 「個人保証をしなければならないなら社長にはならない。あるいは、社長になっても個人保証だけはやらないという人が圧倒的に多いと思います。そういう人が多いのが普通ですから、経営者は、後継者の確保に苦しんでいるのです。逆に言うと、個人保証を嫌がる人が多いのだから、個人保証ができる人をしっかりと準備することこそ後継者確保の近道だと言えるのです」など、具体例を示して説明する。
 「後継者育成には不断の努力が必要なのです。事業が順調になってからとか、歳を取ってからとかと考えていても、後継者問題は間に合うものではありません。私の体験からして、後継者が一人いるから事業承継できると考えるのはどうかと思います。企業にも経営者にも予期せぬことが起こります。もしものことが起こったら、次の一手がある状態にしておくのが望ましい経営でしょう」と締めくくる。

■「引き受け」、「引き渡した」元・建設会社社長の実体験から
 少子高齢化は、産業を問わず事業承継を困難にし、その度合いはますます深まる。政府も「相続税」改正などの対策を講じ始めている。
 本書は、「事業承継は自社株対策ではない」とし、地域建設業者の事業承継を「引き受け」、「引き渡した」著者の実体験と、引き渡した後の学研活動を通じて得た「個人保証の有用性」を説いている。
 「個人保証に苦しんだ経営者人生」「誰も助けてくれない個人保証の引き継ぎ」……と、ネガティブな章が続くが、「それでも個人保証はこんなに役に立つ」と展開する。

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